八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.38


【掲載:2014/10/03(金曜日)】

やいま千思万想(第38回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[「人」が音楽をつくる「音楽」が人をつくる(1)]

 今回から数回にわたって私が関係する合唱団員のことを書こうと思っています。
音楽を奏でるということはやはり人間へと視点が戻っていくのですね。
人が音を作る、決して「人」抜きでは音楽は奏でられないのです。音楽は音楽だけで独立している訳ではないのですね。

 さて、初回はCちゃんのことを書きましょう。
私は合唱団に入ってくる人を呼ぶ場合、女性では名前を呼ぶことにしています。
「何子さん」「何ちゃん」ですね。「子」と「ちゃん」の違いはきっと最初見た時の印象でしょうか、いや性格からですね。何故名前で呼ぶかといえば、いずれ結婚によって姓が変わってしまうことにあります。
永くお付き合いするためには、幼い頃からの人格形成を築いてきた「呼び名」で接したい、その思いが強いからだと思います。
男性は名字(姓)で呼びます。名前で呼ぶことは少ないです。


 さて、Cちゃんですが彼女は音大の学生の頃に入団してきました。
真面目、真っ直ぐで一本気、責任感の強い性格です。
そして今では貫禄がついていますが、当時は細くて可愛かった(失礼!)。その声は当時私が求めていた声質で合唱団の中心になるだろうとの確信で始まりました。
 期待通りの展開でしたね。
お年頃にありがちな選択(結婚と仕事)も意志強く彼女は仕事としての音楽を選択。
自他共に許す合唱団の中心人物となりました。
独唱者を兼ねての合唱団員、その勢いは年々増していきます。
当然、衝突も起こります。
新しく入団してくる性格の荒い人(ソリストに多いですね)との摩擦です。
これは致し方ないですね、音楽を、それも独唱者として勉強してきた者は気が強くないと務まらないからです。
声でぶつかり、練習での物言いでぶつかり、生き方(価値観)でぶつかります。
でもそのことがかえって団員から評価を得、信頼が高まっていったのは、やはり演奏会での彼女の歌唱力にあったからでしょう。

 彼女の歌には彼女の意志の強さが現れます。
多くの人の心の中に迫って、感動を生み出すのはやはり彼女の性格、生き方によるものだとつくづく思います。
そして年々、人の面倒みも良くなっていきました。
団員もそうですが、一時高校の教員を勤めている時などのエピソードは事欠きません。
とことん、やり過ぎではないかと思ってしまうほどに人のお世話をします。
そのいっぽう人一倍の「怖がり」。
小さい頃は体が弱かったこともその原因かと思われます。
 彼女の性格が日本有数の合唱団を作るきっかけ、一助となりました。
これまでにない新しい事を成すためには前進する大胆な行動力、やり抜くための意志の強さ、そして人に寄り添おうとする繊細な気配りと惜しみない愛情、それらが備わっていなければなりません。
 彼女との出会いが合唱団づくりに躊躇していた私の背中を押すことになりました。
実はこのCちゃんと一緒に私の背中を押したもう一人の人物がいました。
次回はそのTAMAMIさんについて書きましょう。





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