八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.48


【掲載:2015/02/21(土曜日)】

やいま千思万想(第48回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[「アンサンブル」をはじめてみませんか?]

 石垣島での音楽は盛んでしょうか。
先だって八重山の地区学校音楽発表会が開かれ、吹奏楽や合唱、合奏の演奏が披露されたようですね。
児童や生徒達にとって音楽の学びが楽しく、そして大事な学習であって欲しいと願っている私にとってはとても深い関心事です。
ステージ一杯に並んでいる様子は笑顔のオンパレードであったと想像しています。

 写真で見る限り、多人数による演奏ですね。これはアンサンブル(仏ensemble)という演奏形態です。
一人で演奏するのでは無く「一緒に」合わせて演奏することです。
学校での音楽教育では当然の形態でしょう。(専門家を育てる個人指導ではなく、協調の学びでもあるわけですから多人数の音楽教育となるのは必至です)

 八重山の古典音楽は基本的に一人で演奏されるもの。つまり個人芸に依っています。そこには学ぶという喜びと共に個人的な心身の厳しい錬磨もまた伴っていますね。
ところが初期の音楽教育では先ず音楽に対する興味や理解を広めるため、深めるために、一人ではなく多人数で演奏することから始めます。
そこには多くの長所もありましょうが、考えなければならない点があることも確かです。
今回は合奏や合唱というアンサンブルのお薦めを少し違った視点で提案してみたいと思います。

 一人で演奏するにも、多人数で演奏する際にも西洋音楽の流れを汲む音楽ならば先ず心得ておかなければならない要点があります。
西洋音楽の基礎は「音階」と呼ばれる音の並びであるということ、そしてその音階は「数学・物理学」の計算によって生まれた結果だということなんです。
つまり音とは数字であるということ。デジタルなんですね。
音楽を楽しんでいるということは「数字列」を実は楽しんでいるんです。
八重山の古典音楽はアナログです。連続的に変化する動きとしての音づくりです。
少しイメージし難(にく)いかもしれませんが西洋音楽とは反対方向にある音の捉え方です。

 アンサンブルのお薦めはこのデジタル化の妙味なんです。
数字列に合わせる喜び、それはそこから生まれる今まで聴いたことも味わったこともない純粋な響きや一体感を得ることに繋がるんです。
共感の世界でしょうか。個の世界だけでなく他との協和・調和の世界が待っているんです。
 楽器を奏される方なら、二人から始めてみましょうか。
楽器が同じでもまた異なった楽器との合わせでもいいですね。
とにかく互いがデジタルに音を追いかけ、そこに生まれるハーモニーやリズムを感じ取ることから始めれば新しい音世界の視野が広がること間違いなしです。
 歌がお好きなら、是非ともコーラス(合唱)を始めてみて下さい。
ただ一つ、提案したいことがあります。
それは楽器のアンサンブルのようにデジタル化を目指して合わせをするということです。
アナログ的でも良いのですが、きっとデジタルを目指せば自己を超える何かが見えてくるはずです。
是非ともアンサンブルを!





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