八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.24


【掲載:2014/02/15】

音楽旅歩き 第24回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[東風に吹かれ休息、そして前進]

 2月は如月(きさらぎ)と呼ぶようです。
立春(2月4日)の月でもあります。
冬が去り、春近しですね。
東風(こち)吹く季節は春の到来。
春風を東風と呼ぶのは中国から渡ってきた暦の名残です。
暦は面白い。
月の満ち欠けの周期もあるかもしれませんが、一年を通じて昼と夜の長さの違いを知ったのが始まりだったかもしれませんね。
古代では一年の間で昼が最も短く、夜が最も長くなる日を一年の始まりとしていました。
その日が冬至(とうじ)です。2013年は12月22日(日)が冬至でしたから、それからほぼ2ヶ月が今経とうとしています。
因みに今年(2014年)の冬至も同じ12月22日となっているようです。
 今月2月は如月(きさらぎ)。
しかしながらこの新暦での2月は、旧暦ではまだ1月の中頃。
旧暦2月(新暦では3月)を如月(きさらぎ)と呼んだ日本では新暦2月の別名としてこの名前を用いています。
なかなかややこしいです。
如月の由来には色々沢山あるようですが、その中の一つ、「衣更着(絹更月)」(旧暦2月でもまだ寒さが残っているため、衣を更に着る月)が一番しっくりきます。

 この如月の期間は私たち音楽のクラシック界では休息の期間と呼ばれて久しいです。
簡単に言ってしまえば「仕事の無い」休閑期間ということになります。
何故でしょうね。
演奏会シーズンが4月から6月にかけて、そして夏が休閑で、秋は最盛期、冬には減少して1月から3月がまた休閑、となります。
 勿論休閑と言っても仕事に追われている人や団体もありますが、前記のような傾向が一般的な一年間の周期でしょう。
寒い日、暑い日、気候の変わりやすい期間はやはり人の動きは緩慢なものになるからでしょうね。
 休閑期間に何をするかが、その後の活動に大きく影響します。
人間休まなくては前に進めないものです。
積極的に休んで果敢に立ち向かう。
その周期を与えて頂いたものとしてその期間を過ごしたいと思うことにしています。
 一日の時間をゆったりと、そして静かに感じることのできる地へと憧れて私は石垣島に来始めました。
そして滞在が何よりも楽しみとなり、また生きるエネルギーを注ぎ込まれる大切な休息地となっています。
そこには大都会では絶対に味わうことのできない時間の流れがあるのですね。
人との交流も穏やかで、じわりじわりと親交を深めることができるなんという心地良さであることか。
目から鱗が落ちる出来事というのでしょうか、そして新しい出会い、発見などが沢山あって、休みであるはずがとても忙しく、また刺激的な日々であったりするのですね。
 この如月の季節に北方からやって来る季節鳥がこの石垣島に舞い下ります。
本当は「一年中居たい!」と囀(さえず)りながら「うりずん」の時期まで滞在です。
八重山の文化にどっぷり浸かりましょう。
そしてこの地からまた創作曲が生まれることになりそうです。
暦の始めの時期をこの地から始めることの嬉しさを今、満喫しています。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ