八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.33


【掲載:2014/06/24】

音楽旅歩き 第33回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[音楽の歴史の中、私は今どの位置にいるか(8)]

 19世紀のヨーロッパに起こった音楽を楽しむ市民階級の台頭、音楽史でいうところの古典派。
その古典派は楽器の時代でした。我々がよく知るオーケストラ、そのオーケストラで用いられる楽器がそれぞれに発展、進化を遂げた時代です。
主役のヴァイオリンはその構造が強固に、そして弦の張力も強くハリのある音になって広い会場でもよく響くようになりました。
 管楽器は種類も増え、またバルブという装置によってどのような音をも出せるようになり用途も広がりました。
さて一番大きく変化した楽器は鍵盤楽器のピアノでしょう。
 「ピアノ」という名称も曖昧です。
本来は歴史的名称として「ピアノフォルテ」あるいは「フォルテピアノ」と呼ばれ、略称も「pf」と記されました。
これは「強くも弱くも音が出せる楽器」ということですし、また別称として「ハンマークラヴィーア」「ハンマーフリューゲル」とも呼ばれたのですが、それも「弦をハンマーで叩く楽器」という意味から名づけられたものでした。
そのピアノも形が大きくなり、また打たれる弦の張力を強くして音量も驚く程大きくなりました。
響きを残せるダンパーペダルが装備され、低音にも高音にも音域が広がりました。
これ、一大事的な出来事でした。
ベートーヴェンがその担い手だと言われています。

 楽器はその前の時代に比べて、均一に大きく強い音が求められたのでした。
それは人類の18世紀から19世紀にかけて起こった産業革命と呼応します。声の時代から楽器(機械)の時代へと、歴史は大きく変化したのでした。

 さて、その後は私たちのよく知るところの音楽の様相です。
前回にも書きましたが、クラシックの時代が訪れ、我が国ではそれを規範として教育が現在に至るまで行われ続けられているというわけです。そして現代。
音楽の様式はそろそろ新しい区分に入ったように思われます。
それはこれまでとは全く異なる時代、電気・電子の時代となりました。楽器が電気楽器や電子楽器に取って代わられたのですね。
 全て我々を取り巻いている音響環境は電気抜きでは考えられなくなっています。ラジオ、テレビ、レコード、全て電気。
最近久しぶりに映画を見に行ったのですが、その映画、いま評判になっている「アナと雪の女王」。
その音響たるは凄いの一言、驚嘆です。
ディズニーのアニメーション技術のレベルの高さに感服。
サラウンド方式による音響はリアル感充分。音が劇場を駆け巡り、四方八方から音が降り注いでくる、また駆け回るのです。
 効果音も凄いですね。
日常の生活音、足音、風を切る音、ありとあらゆる音がコントロールされて迫ってきます。これはもう素晴らしい!の一言。
脱帽です。人間の全身の感覚に響く音響と言っていいでしょう。
音響によって力づくで屈服させられる感覚です。
さて、では気が早いのですが、その後に続く時代って何が来るのでしょう?
次の時代には一体何が待っているのでしょう?
(この項続きます)





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