No.5 '00/11/1

色鉛筆とスコア


指揮者にとってスコアリーディングは毎日の勉強。
日々新たなる発見もあってそれはそれは底深いものではあります。
指揮者に成りたい人は、まずこのスコアを読むことから始めなければなりませんね。

幸いにして現在では殆どの名曲のスコアを購入することができます。
実際にコンサートで使用する大型のものではなく、勉強用の小型のスコアも廉価で買うことができます。
種類も多く、どの版で買えばいいのか迷うこともあるぐらいです。
専門的にいえば、やはりスコアにも歴史があり、その違いも重要なる選択肢になりますので購入する際は詳しい方に相談することをお勧めします。

さて、そのスコアリーディングなのですが、様々な勉強のタイプがあるようです。
スコアに色々な書き込みをしていくのですが、その書き方は人それぞれです。
言葉や記号、そのほか、他人には理解できないその本人しか判らないような謎めいた記号もあります。
全てはその指揮者の<解釈>の結果です。
色鉛筆を使って書く、これも方法の一つですね。

最近は消しゴムで消える色鉛筆が出ています。便利になりました。
消えない色鉛筆を使うには勇気がいりました。間違うこともあるし、途中で色を変更したいことも出てきます。
そういったときは困るんですね。
どういう風に色を使い分けるか?
これは人によって違うでしょうが、私の場合で言いますと、
●フェルマータには赤
●トランペットとティンパニーにも赤
●アゴーギクには青
というところでしょうか。
しかし、ルネッサンスやバロック初期の合唱スコアには色鉛筆を私、使いませんね。
これは色分けするほどには複雑ではないからです。フェルマータも現在のような意味もありませんし、アゴーギクは本来書かれてはいません。もしこの時代のスコアに書き込んでしまうとすれば、それは様式的にもあいませんし、硬直した演奏になってしまいそうで、私は書き込みをしないようにしているんです。

しかし、それ以後のスタイルになると段々色鉛筆を使う頻度が増していきます。
上の使い方に加えて、
●楽器によってパートを色分けします。
一目でどの楽器が演奏しているのか判るわけです。
現代の楽譜ではもっと複雑な書法がとられる場合が多いので、特殊な奏法であるとか、見逃せない<記号>や<入り>にはやはり赤色を使って私は目印を書いていきます。
これで短時間のうちにスコアの全体を把握することができるようになります。

しかし、気を付けなければなりません。
多色は煩雑に繋がります。
結局、色を使う目的は整理しやすくすることにあるわけで、色分けすることでさらに複雑になってしまっては何をしていることやら(笑)
これ、私の初期の失敗例です。

No.5 '00/11/1「色鉛筆とスコア」終わり