長年(と言ってもそんなに長くはないが)音楽をやっていると、心胆寒からしめるような歌に出会うことがある。
別に歌詞の内容が恐い、とか音楽の造りで驚かされる、と言うわけではない。また音が高かったり、和音が複雑で歌いづらい、と言った恐さ(そりゃ自分が恐いんだっつーの)でもない。
ただ聴いているだけで、言いしれない恐怖に襲われる、そんな歌があるのだ。
そう言った歌は、子供の童謡などに多い。誰かが「童謡には異次元への扉がある」と言っていたが、まさしくそんな感じなのだ。
今年、柴田南雄先生の「人間について」をとりあげたとき、女声が「なにわ歳時記」から童謡を歌った。
何かを呼び寄せている、そんな怖さがあった。ふっとその空間だけが閉じられたような空気に見える。
異次元からの歌声のような気がするのだ。
そしてもう一曲、「銀河街道」からのあそび歌。
前からこの曲は怖いと思っていたが、今回は本当に怖ろしかった。
歌詞の言霊のせいかも知れないが、誰かがいなくなっている様な気がして仕方がないのだ。
ある人が消え、その人に関する一切の記憶が奪われ、誰かがいなくなったことに誰も気が付かない。あるいは歌声が過去に届いて、それがその人のDNAをもみ消してしまう、そんな感じがする。ほとんどミステリーホラーの世界だ。後には奇妙な感覚と、謎の空き部屋が残る、てなモンである。
しかし、この事を思った時の寒気は忘れられない。テレビや映画の見すぎ、考えすぎ、と言われれば、確かにそう思うのだが、聴いたときは、「誰かが確かにいなくなっている」と変に確信してしまったのだ。怖い。
今、こんな事書いていて大丈夫か、と思う。ふとあの歌が聞こえてきて、私もいなくなってしまうのでは、と思ってしまうのである。
う〜む、それにしても年末に書くようなネタではない。でも世紀末のネタと言うと遠くないような気もする。(なんだそれ?>私)
00.12.31