じゅずシュッツ

「シュッツの会」便り団内版に連載中のリレーエッセイ”じゅずシュッツ”よりお届けします。

 1993 
   SEPTEMBER           
                       「縣 千晶(ちあきちゃん)」
                                     の巻         

〜2ndアルトのパートリーダーにして、 女声カウンターテナー(!?)の異名を持つ”ちあき”。彼女の声を画面ではお聴かせできないのが残念!!〜


学生時代、私は頻繁に夢を見ていた。
いわゆる不思議な世界に少なからず(どっぷり、といってよかったかも知れない) 魅かれていたので、それはそれで一つの楽しみだった。
が、月日の重なるうち「席替えをやったところ両隣がボーイ・ジョージとデヴィッド・シルヴィアンだった(中学生でしたので許してやってください)」とか、「白バラをしきつめたリゾートホテルのテラスで指を鳴らすと、花びらを浮かべたカクテルを銀盆に載せたボーイさんがひざまづいてくれた」というような、単なる願望(煩悩?)を野放しにした「幸せ」状態の夢よりも、得体の知れない、グロテスクな夢を見ることの方が多くなってきた。

 目覚めてから、「なんでやねん」を自失してしまったのが、「魚」の夢である。
そこに登場する私は、照明の殆どない、壁一面ガラス張りの通路をただ歩いている。 辛うじて明かりとなっている、はるか頭上の乱反射を見上げているうち、それが水面であり、自分が水槽に囲まれていることに気づく。
と同時に、壁いっぱいにゆっくりと動く影に、背後から追いぬかされていくのである。
その感覚が夢の域を超え、そのまま記憶に焼きついてしまった。

           **********************

それほど日を違えず、友人と会った際、彼女の方から開口一番に、偶然夢の話が出た。
「ゆうべな、すっごい惜しい夢、見てん。」
「とゆうと?」
「デートしててんけど、途中でレストランに入って。そこで(彼女の大好物の)ハンバーグたのんでん。すっごいおなかすいてんねんけど、だ〜いぶ待たされてんねん。
ん〜で、やっとでてきたやつが、これがすっっごい、おいしそうやってん。
ほんっまにおいしそうやってんけど、どうも相手に急用が入ってしまったみたいで、すぐ出んなあかんようになってしもてん。
『え〜っ!』ってゆって、一口だけでも食べてやろーと思ったところで、目が覚めてしまってん」
「おしかったなあ」
「うん。目が覚めてんけど、ど〜しても食べたかったから、今やったら間に合うかもしれん!と思って、もっかい目ぇつむってん」
「・・・うん。」
「んでな。(ここで友人は破顔の笑みを浮かべた)がんばってひと口、食べてん!」
「えっ!」
「(今度は至福の笑みを浮かべて)おいしかったあ〜」

そのわかりやすさとポジティヴな姿勢に心底感ずるところがあったらしい。
以後、妙な夢はぱったりと見なくなった。




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