八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.1


【掲載:2013/04/18(木曜日)】

やいま千思万想(第1回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[少年たちの世界に涙]

 石垣島に来るようになって15年、メンバーに誘われて海に潜り始めたのが最初。
両親は沖縄那覇出身。しかし私は大阪生まれの大阪育ち。
沖縄は遠い外国のように感じていて、おそらく行くこともないだろうと思っていた私が今では毎年何度か訪れる大切な地となっているのですね。
 大阪を拠点とする活動も、京都、名古屋、東京と広がり、埋め尽くされたスケジュールノートを無理やり空けるようにしてやってくる石垣は今の私にとって、そしておそらく未来に渡ってとても興味深く、またエネルギー源にもなるだろうと確信するようになっています。

 都会の雑踏は活気に満ちてはいますが、しかし果てしなく無機的で索漠としていることも確か。すり減っていく「心」と対峙しながら、「心」が温かいとはなにか、燃えるとはなにか、生きる(活きる)根源とは何かを切実に探ろうとする私が居ます。
 演奏家(指揮者)としての活動で必須なもの、それは心と心を結ぶ「見えざる熱き共振の感動」です。そう願う私にとって今ではなくてはならない地、それが石垣なんですね。
私が感動し、涙するものがここにはたくさんあります。その一つ、それが歌い踊り、体全体で表現しようとする子供たちなんです。

 「オヤケアカハチ」の練習を見たのが2009年10月。
他にも子供たちが発表するステージはあると思うのですが、たまたまそこに出演する関係者に教えられて訪れた「石垣少年自然の家」。
そこで繰り広げられていた少年たちの世界に涙を流してしまいました。
子供たち同士が工夫しながら動きを付けていく練習。もちろん先輩格のメンバーが後輩のメンバーにアドバイスしているようです。
その動きは教えられてのロボットのようなものではありません、そこには生き生きとした自発的な動きが生まれています。

 音楽は真似るというだけでは感動は生まれません。
表現する者の感動が伴わなければ人に感動を伝えることはできないのですね。
初めて見るだろう私たちを、意識しながら彼らは自らのリズムで力強さと軽快なステップを踏み続けます。
時折そこに飛び交う先輩たちの「笑って」という声掛け。部屋の空気はどんどん熱く、そして楽しさが広がっていきます。
 私たちが立ち去ろうとした時、次なる驚きが訪れました。
全員を集めたリーダーが「見ていただこう!」と、本番さながらにワンシーンを演じ始めたのですね。
子供たち、その明るさと小気味良いリズム、そして人の心を繋ぐような真っ直ぐな視線。

 石垣の子供たちの根っこに未来を見た!私はその時、真に心が揺れ動いたのを思い出します。
石垣への想いを綴りたいとこのコラムを書くことにしました。
この島には宝がいっぱいあるのですね。それを磨けるかどうかは私たち大人の責任でもあります。
感動が感動を生む・・・私の感動の想いを綴るつもりです。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ