八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.61


【掲載:2015/09/10(木曜日)】

やいま千思万想(第61回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[さまざまな音世界 音律の話(その7)]

 今回は西欧の音律から一旦離れて日本の音律について書いてみることにします。
実はそのテーマこそ私が目指していることなのですが、これがまた厄介なことになっていて複雑かつ難解。沖縄、特に八重山のそれは謎に包まれているといっていいかと思います。
 いきなりの結論で興味は薄らいでしまったかもしれませんが、まぁ、その事情を知っていただくのも大事ではないかとの思いで書いてみようと思います。

 日本の音律、音階は西欧の7音音階〔ドレミファソラシ(ド)〕に対して5音音階〔ドレミソラ(ド)〕であることはよく知られている事で、ヨナ抜きとも呼ばれるものです。
 ヨナとな何か?
明治時代に使われ始めたのですが、現在私たちが使っている階名の代わりにその頃は数字のヒフミヨイムナを使っていて、そのヨ(四度)とナ(七度)の音、ドレミファソラシドの「ファとシ」、それを抜いた音階だという事ですね。
 この5音音階についてはもう少し説明したいことがあるのですが、それをするととんでもなく深い森に迷い込んでしまうことになるので、今回はその問題に深入りしないで「5音音階(ペンタトニック音階)」ということだけに言及します。

 純粋な響きを元にして、数学的に取り出して音階を作ったのはピタゴラスだと書きました。
それはドという基本の音から、順にソ、レ、ラ、ミと計算と響きを通して取り出し、並べ替えて(ドレミソラ)とした音階です。これは正に日本の雅楽にも用いられている音階の「ドレミソラ(ド)」と同じですね。
 言い換えれば、人類の音の歴史において、この時代までは音感覚は同じであったと思って良いようです。つまり世界共通。
 その後「洋」と「和」に別れたのですね。(いえ、発展が異なったというべきでしょうか) 「洋」のピタゴラス音律はその後、ミからシを発見し、更にシからファを算出して「ドレミファソラシ」の音階となり、七音音階プラス「ド」のオクターブとしました。
 しかし、日本ではこの2つ、シとファを積極的に使わない、七音階には馴染めなかったのか、あるいは必要とはしなかったのか、シとファを抜いて現代に至っています。
現代では西欧の七音音階になった日本と思われていますが、まだまだ根っこでは5音音階が優勢です。

 先走るのですが、それでは沖縄はどうなのか。一般的には「ドミファソシド」で「レ」と「ラ」が抜けている(「ニロ抜き音階とも「二六抜き音階」)となっているのですが、よく調べてみるとそう単純にはくくれないようです。
 奄美を境にして、以北と以南では使われている音も違いがあって、学者の間でもまだ沖縄(琉球)音楽として統一できていないというのが現状です。
 最初にも書いたように、日本では西欧のように理路整然と音律が語られるようにはなっておらず、まだ理論化できていないのですね。諸説あるということでしょうか。
 5音音階について次回にもう少し書きます。
(この項つづきます)





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