八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.70


【掲載:2016/01/28(木曜日)】

やいま千思万想(第70回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

「人」が音楽をつくる「音楽」が人をつくる(8)

 人は音楽を欲し、奏でます。音楽はまた人によって様々な歌となります。声が最初でしょうか。
叩いたり、吹いたり、擦(こす)ったりする楽器でしょうか。人は自然環境の中で、あるいは人がつくる社会の中で沢山の音楽を作り、奏でてきたのですね。
 その人に焦点をあて、人と音楽の関わりを書いてみたいと思いました。
以前、このコラムで第一回目を2014年10月3日(No.38)に書き始め、その年の12月24日の第七回(No.44)まで続けました。そのテーマを再開してみようと思います。

 再開のトップに登場するのはT.E嬢です。
彼女との出会いは私が教えに行っていた大学の合唱団。体は小さいのにデカイ態度の子が入ってきたものだとは最初の印象です。
しかし、元気がいい!歌も律動的で明るい。放つ雰囲気もムードメーカーで、デカイ態度も相まって中心的な存在となっているようでした。
 しかし、練習にあまり来なかったのですね。本人の弁では私の行く日には参加して居たというのですが、とにかくいつも居ない、というのが頭にこびり付いています。
事情は、手話をやっていたり、いろいろと忙しかったということだったようですが、とにかく印象強い、存在感のある子でした。

 忘れもしません、その子が私の合唱団に来る予定になっていた1月17日の火曜日、今から21年前の1995年、それはあの阪神・淡路大震災の日だったのですね。・・・そのこともあって彼女の入団はその一年後ということになったのですが、この話は今も我々の間で交わされる重く、辛い話題です。

 彼女が私と石垣島を結び付けました。毎年何度か訪れるようになり、演奏もし、コラムを書くようになったのも、私を石垣に連れてきた彼女の働きがとても大きかったからです。
スキーに夢中になっていた私に、夏のダイビングを教えたのは彼女です。
美味しい食べ物や、珍しい物産、特徴あるお店など、その情報収集はいつも感心を通り越して驚嘆の域に入ります。
 その情報収集能力とその行動力は今や団のツアーコンダクターとしても役立っています。
私が全国各地を仕事で訪れるときなど、彼女の案内無しでは成し得ない程になってしまいました。
交通手段のチケット手配、ホテルの予約、会場への案内、それら全てをこなします。
私はそれらの煩わしいことから逃れて、常に仕事に集中することができるというわけです。
スコアを読み、練習スケジュールを考え、書籍を読むということを。
団体として活動していくには、様々な専門的知識の結集が大切です。
 音楽の技術的なことから、団体維持のための、そして活発な活動を押し進めていくためにもあらゆる職種と言ってよいほどの人材が必要となります。
T.Eはその重要な一端を担う一人です。その人が合唱団の副代表を務めます。彼女の職業は精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)。
その職場での働きぶりも推して知るべし、ということになると思うのですが、いかがでしょう。
(この項続きます)





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