八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.99


【掲載:2017/03/30(木曜日)】

やいま千思万想(第99回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

音楽の新しい時代の扉を開いたモンテヴェルディ(No.3)

 今年生誕450年を迎える、西洋クラシック(ルネサンス・バロック期)の巨匠でありまた時代の問題児であったクラウディオ・モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi)という作曲家紹介の3回目です。
その代表作が通称《ヴェスプロ》と呼ばれる曲(邦訳が「聖母マリアの夕べの祈り」)。
この作品の聴きどころをお伝えし、魅力を感じて頂きたいと、書き始めた不定期の連載です。
今回は用いられた楽器について知って頂きたいと思いました。
専門的な事柄なのですが、全体としてのイメージが大切ですし、大きな魅力ですから少し想像力を働かせて頂いてお読みくだされば嬉しいです。
 演奏するに当たってはこの楽器の問題に突き当たります。先ず、こういった古楽の黎明期ではピッチ(音の高さ)も地域によって違いました。
ですから出版されている楽譜も複数あって、指揮者、演奏家はどの楽譜を選ぶか、つまりどのピッチを選ぶかを先ず決めなければなりません。
面倒な準備です。しかし、そういった面倒さを押してでも研究を進めてきた音楽学者や演奏家に敬意を払いたいですし、現在では聴けなくなってしまった当時の「響き」を聴くことができるのですから奏者としては演奏を是非してみたいですね。
演奏するにあたっての問題「今は廃れてしまった楽器」です。
博物館や個人のコレクションで眠っていた楽器を訪ね、音を聴き、楽器のメカニズムなどを知り、時代と共に忘れられてしまった楽器の復元。
当時の「響き」を追って研究を重ねてきた人々に感謝です。これまで陳列されていただけの古い楽器を、実際に演奏できる楽器として生まれ変わらせたのですからね。そういった趣味とか興味に基づいた飽くなき響きの追究が、実際に演奏する奏者と一体になった結果なのですから本当に頭の下がる思いです。

 復元された楽器の名前を挙げてみましょうか。横文字も多くなりますがお許し下さい。
Violino da brazzo(ヴァイオリン)、Viuola da brazzo(ヴィオラ~チェロ)、Contrabasso da gamba(ヴィオローネ)、Cornetto(コルネット・現在のトランペット)、Trombone(サクバット・現在のトロンボーン)、Trombone doppio(バス・サクバット)、管楽器のFifara(フルート)Pifara(ショーム)Flauto(リコーダー)。そして、主に低音を強化する楽器として、Violetta(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、Liuto(リュート)、Tiorba(テオルボ)、Arpa doppia(トリプル・ハープ)、Fagotto(ファゴット)。
忘れてはならないものがありましたね、Organo(オルガン)とClavicembalo(チェンバロ)です。
 いくつご存知ですか?想像がおつきになりますか?それらはどんな響きを鳴り渡らせるのでしょう。
未知の世界、しかし面白く、世界観が変わる名曲です。





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