八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.100


【掲載:2017/04/13(木曜日)】

やいま千思万想(第100回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

歴史と今を繋ぐCD制作と出版

 近々CDをリリースすることになっています。
これまでにも多くのライブ演奏を収録したものを刊行してきているのですが、また新たに加えようとするものです。
できてみれば今回のCD、言うならば私の音楽を全てさらけ出すことになるような気がしています。
きっかけはこれまでに長きにわたって聴衆としておいで下さっている方々の中からの強い要望。今回、随分とお待たせしてしまいましたが漸(ようや)くリリースの運びとなりました。
収録は終えています。今、編集作業が進んでいる段階です。

 さて、そのCDに収録されている曲はなにか、なのですが「讃美歌」です。
この日本に西洋音楽の基礎を伝え、教え、普及するという大きな役目を果たした曲集、讃美歌。
讃美歌の受容の歴史は古く、戦国時代のキリスト教伝来と共に始まりました。江戸時代の鎖国中も細々と繋がり、明治になってからは欧化政策の一環として、アメリカを経て一挙になだれ込むように日本に根付きました。
 日本の隅々まで、知識階級から庶民の生活の場へと西洋音楽を広げた推進役を果たしたと言えます。
本土では幼い頃、讃美歌に触れ、歌い、奏し、体に染み込ませた人たちも多いはず。そういった体験がきっかけとなって上述の西洋音楽受容の黎明(れいめい)期には我が国の音楽文化の基礎を築いた偉大な先駆者としての音楽家が輩出しました。
讃美歌はそれほどに大きな影響を与えました。
日本人の心の奥深く浸透した音楽といえるかもしれません。

 讃美歌といってもいくつかの種類があって、各教派、各教会によってそれぞれ異なっています。
カトリック教で歌われるもの、プロテスタントと呼ばれるキリスト教会で使われるもの。
現在発売されているものも驚く程沢山の種類があり、それぞれが独自の教理によって用いられています。
 今回、私たちが収録したのは、主に日本基督教団讃美歌委員会編集の「讃美歌(1954 年)」「讃美歌第二編(1967 年)」「讃 美歌21(1997 年)」に編纂されている曲です。
これらの中には、最近はあまり歌われなくなってしまった小学唱歌のルーツとなった曲もあります。(よく知られた「主われを愛す」というメロディーも明治中期以来、幾つかの唱歌に用いられています)。
そういったことから青春時代(学校)を呼び起こす歌、結婚式で歌われる祝歌、お葬式でしめやかに歌われる葬送歌など生活の中で用いられたことも多く、また、幼い頃「日曜学校」に通って歌っていた懐かしさを覚える方もいらっしゃって、CD化を願われる方が多いのかもしれません。
 今回のリリースは強い要望があってのこと。
そして私自身、上述のように日本の音楽史、精神史としても興味があり、また「日本語」の表現としても意義有るものとの思いも重なって発刊することにしました。
言葉と音楽による祈り、日本語の詩の変遷、その時代背景、それらがどのように結びつけられているか、一聴していただければ嬉しいです。





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