八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.109


【掲載:2017/09/21(木曜日)】

やいま千思万想(第109回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

日本語の数える言葉「助数詞」は豊富

 以前から気になっている言葉がありました。
まぁ、自分の中で納得できない、あるいは疑問に思う「言葉」は山とあるのですが、この呼び名にはずっと「?」が付きまとっていたのですね。
それはお寿司屋さんで使われている「いっかん」という単位。
記憶に残っているのは、未だ学生の頃だったか、あるいは卒業直後だったか、東京のオルガン製作の現場に見学に行った時のことです。

 オルガン製作過程について色々教えて頂き、調律法や、メンテナンスのことなど話し終えて、その工房の主に「東京に来たのだから、今からお寿司を食べにいきましょう」と誘って頂いたのでした。
そこから車を飛ばし(猛スピードで走ったのを覚えています)、ある風格のある寿司屋に到着。
今も覚えているのですが、「いくらぐらいするんだろう?」と凄く気になり、財布の中身はいくら入っていたっけなんて心配したドキドキ感。
「好きなものを頼んで食べて良いよ」とその方は仰る。
わけもわからず、好きなものを頼んだのですが、お店のどこを見ても値段が書いてありません。
いわゆる、「時価」というものですね。
知らないと言うことは恐ろしいことです。
帰り際にその方がお財布から何枚かの一万円札(だったと思います)を出しているのが見えました。
もちろん、心配していた私の財布は薄くはなりませんでしたが、そのことにホッとしたということではなく、食べたネタについて、そして板前さんとの間で交わされる会話が強烈な印象で、唖然としてお店を後にしたことを思い出します。
その時、使われていた「いっかん、下さい」との注文。「かん」って?
特別感、高級感があって格好いいなと思いましたし、寿司は「かん」という単位で呼ぶんだとこの時初めて知りました。
しかし、お恥ずかしい話ですが、「いっかん」は二つのことだと思っていました。でも、本来は一つのことですね。

 コラムを書き始めて日本語の難しさを改めて知るようになりました。
今回は「助数詞」と呼ばれる数えるための言葉。日本語にはこの言葉が豊富にあります。その使い方に感動したり、あまりの多さにあきれたり。
代表的な例では「ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や、ここの、とお」と数える日本古来の大和言葉に添えられる「つ」。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、と発音され、9まではこの語が付きます。
その後1300年くらい前に中国、朝鮮語から伝わった「いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう」にはこの語は付きません。

 寿司の「かん」に戻りますが、この言葉を使うようになったのは昭和初期だそうです。
なんとなく江戸時代と思われがちですが、意外にも新しいのです。
これまであえて「かん」と平仮名で書いてきましたが、漢字を当てはめれば「艦」「巻」「貫」ですね。
特に「貫」は1990年前後のバブル期が生んだ数え方だといいます。
日本人の視点が判る「助数詞」。本当に難しいです。





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