八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.4


【掲載:2013/05/12】

音楽旅歩き 第4回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[ホールはリアルな「人の場」にすべき]

 五月の連休3日、私は東京池袋にいました。
私が居た場所は「東京芸術劇場」。
大きなパイプオルガンもそそり立つ、日本に於ける最良ホールの一つといわれる客席数1,999席というコンサートホールです。
 ここで東京大学、立教大学、早稲田大学、慶應義塾大学、法政大学、明治大学による「東京六大学合唱連盟定期演奏会」が開かれ、その最終ステージである「合同ステージ」の指揮を担当しました。
 学生数160名ほどの男声合唱です。
彼らの声が満席近いホールの天井桟敷へと飛んでいくのが良く解り、大勢の声もバラバラにならず纏(まと)まって響いています。
大ホールでの音響の良さを堪能した一夜でした。

 良いホールの条件、それは音響(反響・残響時間)座り心地良い席、客席からの可視性といったものなのですが、器の大きさ、つまり客席数の大きさと聴衆との親密度の関係がいつも気になってしまう私です。
 大きなものより小さなものに私は惹かれます。
それは身近な肌感覚、伝わる細やかな息づかい、つまりはコミュニケーションの取りやすさです。

 大都会にはその人口に相応(ふさわ)しいホールがあるものです。
日本にも「世界の日本」を誇示すべく立派なホールが建てられています。
私の住む大阪にも幾つかの素晴らしいホールがあり、今年建て替えられて二代目となった「フェスティバルホール」(客席数2.700席)は音楽界での話題となっています。
 人が一堂に会する場所。
 それも「音」を楽しむ場所が音楽ホールです。
地域に相応しい音楽ホールとは人と人とが「音」を介して社交する場。
 「多くの人を集める」という目的でなく、一方通行のように音が流れるのでもなく、互いが触れ合うほどの距離で表情を見合い、感覚を交わし合う、そのリアルな「人の場」にすべきだと私は思うのです。
 200〜500位の大きさがいいですね。
歴史を見れば音楽はそのような場所で発展してきたのですから。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ