八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.5


【掲載:2013/05/24】

音楽旅歩き 第5回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[「沖縄」が作曲家に新鮮な発想を与える]

 本土で沖縄音楽が演奏される機会はそう多くないと思います。
とはいうものの、音楽には色々なジャンルがあるわけで、それは合唱を含むクラシック系での話。
ポピュラーやポップスの分野ではよく耳にします。
良い歌、そして才能豊かな歌手が出てきたからだと思いますね。
クラシック系の音楽家としてはもう少し演奏を増やして紹介したいところ。
 その中にあって合唱は比較的恵まれているかもしれません。
 作曲家が沖縄音楽をモチーフにして作品を書く機会があるからです。
 西洋音楽による語法が飽和状態になりつつある今日、日本の伝統音楽の中で「沖縄」の音素材が作曲家に新鮮さを与えるのですね。
 また沖縄出身の作曲家や音楽家が積極的に創作や演奏に携わるようになったこともその機会が増えた原因です。

 今月18日、名古屋で私が指揮する「名古屋ビクトリア合唱団」による演奏会があったのですが、そこで沖縄那覇出身である瑞慶覽尚子さんの作品『うっさ くわったい』を演奏。
 合唱組曲であるその作品には、上がり口説(ぬぶいくどぅち)、じんじん(ほたる)、てぃんさぐぬ花、徳利小(とぅっくぃ ぐゎ)、月ぬ美(かい)しゃ、なり山あやぐ、谷茶前(たんちゃめー)の七曲が収められています。
 原曲を生かしながらの見事な編曲は、沖縄音楽の魅力を十分に発揮して歌い手も聴き手も『うっさ くわったい(嬉しくてしょうがない)』の世界に惹き込みます。
 「じんじん」ではホタルに似せた光で演出し、「徳利小」では小道具の徳利と盃が踊りながら酒を酌み交わし、「なり山あやぐ」は男女ひと組のペアになって客席を囲んで歌垣風の情愛の響き、そして「谷茶前」ではカチャーシーで締めくくる。
 観客と演奏者が一つとなって作品の世界を楽しんだ舞台でした。
 沖縄を紹介したいですね。
 音楽、文化のジャンルを超える活動で沖縄の真髄に触れ、未来へと繋ぎたいですね。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ