八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.52


【掲載:2015/04/19(日)】

音楽旅歩き 第52回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【食事の席は百花繚乱の様相 マナーにも好感】

 仕事のため自宅を離れ、各地のホテルに泊まることの多い私です。
ホテルの印象でその土地が好きになるか、そうでないかが決まりますね。
 ホテルはサービス業。そのサービスの質が大事です。フロントから始まり、部屋の清掃に至るまで滞在中の居心地が快適になるか、不快な気持ちで過ごすか、それによってその印象は雲泥の差となります。
 私は音楽もサービス業だと思っています。
ですからホテルのサービスが気になって仕方ありません。これまでも随分と各地で辛口の意見をホテルに対して言ってきました。
 しかし今ではその事でホテルの方々とはとても良い関係に至っていることが多いです。

 長期にわたる石垣滞在ではあるホテルをいつも利用しています。
それは初めて訪れた時に出会ったフロントの若い方が気に入ったのと、そのホテルの朝食が要因です。
 一日の始まりである朝食は大事です。その美味しさといい、少しずつ変化するメニューのその心遣いが嬉しかったですね。さりげなく支度する仕草の中に「おもてなし」を感じ、1日の始まりはとても充実の時間となりました。

 朝食と言えば、そこでの人間模様が面白い。石垣ではないのですが、最近もこんな風景を見ました。
 30代カップル。向き合いながらの朝食なのですが、男性はトレイに額を今にもくっ付けるかという低い姿勢で何やら一点を見つめて黙々と食べています。
腰を曲げての行為ですからそれはなにやら動物を想像して・・・・。
向かいに座る女性はそれを気にする風でもなくこれまた黙々と食べています。近隣の国の方でした。

 私のテーブルの隣り。これも30代のカップル。
会話が外国語に聞こえて、「海外観光客が多いなぁ」と思いながら、交わす言葉に何とはなしに耳を傾けます。
ボソボソと喋るその喋り方が気になり、また言葉も判らないので、一体どこの国だろうとまたまた聴き耳を立てます。
 そのうちに男性の方が席を立ちもう一度トレイに食べ物を乗せて席に着いたのですが、そこには納豆が。
「ほう、納豆も食べるんだ」と興味が湧き、聴き耳再開です。で、判ったのですがこのカップル、実は日本人だったのですね。
 それにしてもあの会話は不思議でした。あの会話でどうして分かり合えるのか?
その滑舌の悪さは必聴に値するもので、コミュニケーションは言葉だけにあらず、を証明して興味が尽きませんでした。
食事の席は百花繚乱の様相。お国模様が顕わになります。
 しかし最近の近隣国からの観光客、数年前のような傍若無人さは消え、随分とマナーが良くなっているとの印象です。
 上記の朝食時、中央に陣取ったテーブルでは他の近隣国グループの朝食が始まっていたのですが、そこでは抑制の効いた声、立ち座りの静かさ、回りを気遣うそれらの動きにとても好感を持ちました。
 一昔前の外国での日本人もきっと回りからはそんな風に見られていたのでしょうね。
公私の分け方という問題、そしてマナー。考えさせられます。





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