八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.82


【掲載:2016/08/28(日)】

音楽旅歩き 第82回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【活力ある協働こそが人々の生活を支える】

 8月の恒例は合唱団の夏合宿です。私が振っている合唱団(Tomas-chorと名付けられています)の中から5団体が一堂に会して行われるもので、五日間の日程でスケジュールをたてます。
場所は伊豆湯ヶ島温泉。24時間練習ができる音楽団体専用の宿です。
つまり、合唱三昧、歌三昧の期間だ、ということになります。秋のコンサートでの曲目を集中的に練習できるメリットがあるのですが、ただ、5団体の曲を私一人でこなすわけですから、充実感はあるものの疲れ方も半端ではありません。
その上、今年はそれぞれの合唱団に難易度の高い曲を選んだものですからその集中度も例年に比べて度を越えていたと思います。
しかし、改めて幸せというものを感じたことも確かです。
五日間の合宿場は一日中笑い声と歌が絶えることのない日々。
本当にこういった日々が「平和」といういうものなんだと、いやに感傷的になったのも私が疲れていたからでしょうか。

 さて、その練習風景のことはさて置き、今回は「伊豆」の地と、合宿を終えてのクールダウン(私の休養日)に選んだ伊豆の「三島」滞在の事について書いてみたいと思いました。
伊豆の合宿場は、伊豆半島のほぼ真ん中。深い山間にある湯ヶ島温泉の最奥に位置する温泉宿(音楽合宿の宿)です。
伊豆の有名な温泉といえば半島東部の熱海や伊東温泉など。
しかし私たちが訪れる半島中央の山間部も昔は訪れる観光客も多く、賑わっていたと聞くのですが、今は昔、現在では寂(さび)れた風で、車中からの風景には廃業して朽ち果てようとしている宿跡も多く見かけます。
それぞれに事情があってのことかもしれませんが、もっと大きな衰退の理由があるのではないかと推測する私です。
利用する者としては、魅力ある温泉地として、リピーターが絶えない観光地であって欲しいと願いますね。
温泉地は温泉だけに頼っているというだけではなく、創意工夫、より集客を得るための町ぐるみの取り組みで、人寄せの知恵を出し続けなければならないのでしょうね。

 それに比べ、同じ静岡県の三島の町(伊豆半島の中北端に位置する市)は熱っぽい雰囲気に包まれていました。
キャッチフレーズは「せせらぎと緑と元気あふれる協働のまち」と銘打っています。
たまたま訪れた日が三島大社の夏祭りの時期と重なったとはいえ、人を呼び寄せようとする町の人たちの熱気、心意気を感じます。
箱根西麓三島野菜を使用してつくられた「みしまコロッケ」などのブランド化、富士山からの湧き水を活かした町作り。
そして昨年作られた日本最長400mの人道吊橋「三島スカイウォーク」。
美しい富士山と眼下に広がる駿河湾の景観を、と誘います。
この町、人の「協働」が活かされていると強く感じました。
いつも書くことなのですが やはり自然にだけ頼るというのでなく、「自然」の魅力と「人々」の活力ある協働を併せ持たせてこそ、確固とした充実の経済的基盤を築けるのではないかと思った次第です。





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