八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.81


【掲載:2016/08/07(日)】

音楽旅歩き 第81回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【意外な発見 初めての富山訪問】

 先月(7月)、富山に行ってきました。日本は広いですね。これまでにも日本の各地を訪れていますが、まだまだ足を踏み入れていない県はあります。
一時的な観光や訪れはあっても、県民性を知る程の長い滞在や付き合いは、そうできるものではありません。
今回の富山訪問は、来年3月に演奏会を計画する「バッハアンサンブル富山」という音楽団体からの依頼で訪れたものです。バッハ「ロ短調ミサ」全曲を指揮します。

 富山はこれまで何度も通過することはあっても、一度も降り立つことのなかった駅。大阪からでは石川県の金沢は近いという感覚なのですが、その先の富山県は「遠い」のです。
以前から一度は行ってみたい土地だったのですがなかなか叶いませんでした。
今回、指揮依頼という事情で富山に行く、それは北陸新幹線にも乗ってみたいという好奇心もあって訪れるには絶好の機会となりました。

 今回行ってみて印象が変わりました。
行き始めたばかりなのですが、とても好きになってしまう予感がします。
開通した北陸新幹線の効果もあってか観光都市金沢は人が増え、これからも古い街並みや文化の保存を継承されての発展を金沢に望みたいと思うのですが、隣の富山ももっと知られ、金沢にはない佇まいに是非とも静かなブームが訪れることを期待したいですね。
 何が気に入ったのでしょう?
ちょっと調べてみたのですが、先ず生活の空間の広さです。
両市の人口密度を比べれば、金沢が1平方キロメートルあたり994人に対して富山は337人で(2016年6月1日現在)、全国の市区町村人口密度ランキングでは1738中、金沢が372位、富山は672位。因みに石垣市は854位だそうです。
豊かな生活空間のゆとり、として私はこの数字を捉えます。
 富山の話に戻りますが、取り巻く環境も良いですね。
今回、団員の方に連れていって頂いた呉羽丘陵から望む富山市街と立山連峰の眺望が最高です(残念ながらその日は曇っていて連峰は望めなかったのですが)。
また金沢と同じで食べ物は日本海からの恵みで溢れています、といった具合です。
私のお気に入り度が判って頂けるといいのですが。

 さて肝心のことが残っていました。
今回出会った「バッハアンサンブル富山」の人たちの熱心さ、真摯な態度にも驚かされました。
その合唱活動は歴史も重なって県の大きな文化活動の一つともなっているようです。
とはいうものの、コンサートの数であるとか活動の実態は決して他の大都市のようなわけにはいかないようですが、その活動に対する熱意は並々ならぬものに感じました。
土地柄は気候と深い関係を持ちますが、この地では冷害が多く万全に備える気質があると聞きます。
県民は粘り強く忍耐力に優れているということでしょうか。
演奏会に向けての後8ヶ月、富山と共にJ.S.バッハの大曲「ロ短調ミサ」の魅力(曲については2013年8月18日No.11に書いています)を堪能しようと思っています。





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