八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.89


【掲載:2017/01/13(日)】

音楽旅歩き 第89回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【波穏やかな瀬戸内は静かで人も温厚でした】

 前回のコラムから少し間が空いてしまいました。
実は入院するという67歳にして初めての経験を味わったからです。
気になりつつも自分の体に起こった初めて尽くしの体験で、文を書くという集中力を維持することが困難でした。それについては後に記すことにして、今回はその入院後のリハビリも兼ねて出掛けた瀬戸内旅行の話をまず書きたいと思います。

 以前から一度は行ってみたいと思っていた瀬戸内海に面した街々。
今回訪れたのは全国的にも有名な「尾道」や「鞆(とも)の浦」。
それは噂に違(たが)わず美しく、印象深い素敵な観光地でした。
そして今回は残念ながら通ることができなかったのですが、瀬戸内に浮かぶ眺望の地としての大小3.000にもおよぶ島々や、それらを繋いで新しい観光目玉となっている〈瀬戸大橋〉や〈瀬戸内しまなみ海道〉などは是非次回には訪れたいと強く思わされたのでした。
かつては工業地帯として有名だった瀬戸内。
伝統的な造船業、繊維工業、石油化学コンビナート、製鉄所などが強く印象づけられていましたが、行って良かったです。
 映画の撮影地としても知られた「尾道」や「鞆の浦」は海と山がとても近く、急な坂の多い街。
今回、私のリハビリとしては最適のコースでした。
海は怖いものだ、と最近感じ始めていた私には「こんなにも穏やかで美しい海、風土があったのだ」と心静かに昔を懐かしむような感覚を蘇らせました。
そういった地であるからでしょうか、そこに住む人々の印象は「温厚」そのもの。
気持ちの良い出会いと語らいです。
観光客を相手にする飲食店やお土産店、そして特に地元の特産品を掲げて接客している、そこに住んでいるだろう人の言動がとても穏やかで、フレンドリーなことに意外にも驚いた私です。
これまでにも多くの有名な観光地を訪れている私が、「意外」にもとは適切な言葉ではないかもしれませんが、そこに本当の姿を感じたからに違いありません。
特筆すべきは、訪れた地がとても「静か」だったということ。
私のように疲れて訪れた者にとってはその静けさが何よりの妙薬です。
月と星が何と澄み切って煌々と輝いていたことか。

 さて、私の初体験の入院のことを。
前号でストレスのために起こった「逆流性食道炎」なるものの気重な心境を書きましたが、実はその症状は「不安定狭心症」なるものから来ている、とその後判明。
「奇跡が起こっていましたよ」とは医者の言。
もう少しで「心筋梗塞」となって危なかったということのようです。
急遽の入院(そこに至るまでには私の周りに居るドクターたちの素晴らしい連携がありました)、そしてカテーテルでの治療。
最近の治療は驚く程の進化を遂げているようです。
血管の中に中空の柔らかい管を挿入し、様々な治療を施すことができます。
今や私の心臓を取り巻く冠動脈には血管内拡張用のステントと呼ばれる精密な金属製の筒が三本入っています。
その後の検査で治療の結果は、全てクリアー、回復との診断です。





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