八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.91


【掲載:2017/02/12(日)】

音楽旅歩き 第91回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【小さな世界の中に全てがあり 大きな世界と結び合う】

 いつ頃からか「小さなものは大きなものをも含む」という言葉が頭に住み着いています。
私は神経質な子どもだったようです。
しかし、時として大胆な行動や言葉を発して周りを驚かせてもいました。
決して表に出ようとは思っていなかったと思うのですが(母親の前掛けを掴み、後ろに隠れてチラチラ顔を見せているような子どもでした)、しかしいつのまにか出しゃばるつもりがないのに表に出されている、そんな子ども時代です。
 小学校の頃は歌や楽器で舞台に立ち、行事などではなんだかんだと選ばれて皆の前で演奏し、中学や高校では音楽以外の授業の中でも意見を問われて生意気にも人から感心されるスピーチをしてしまう、周りの人には生意気とも思われてもいたことでしょう。
結局その連続で人生を歩んできています。

 音楽に接していたことは私にとって大きな意味を持ちました。
音楽することで自分を受け入れられ(好きなことで褒められ、誇り、自信を持て、そして自身を見つめるもう一つの目を養いました)、それが喜びや楽しみとなって、辛いことや悲しいこともやり過ごすことができたのではないかと思っています。
練習のことや公演する際のマネージメントなどで悩み多かったですが、全ては音楽の結果によって報われた形でした。
 〈神経質な子ども〉と書きました。
外に向かってより、自分自身の内に向かって〈気になること〉が働く。そうしてどんどん細かなことへと目が行ってしまい、それが高じて自分の大きな反省点だと思うネガティブ思考となって気持ちが大きく覆われる。
この性格を〈よく気がつく子だね〉と、褒めてくれる人もいたのですが、私自身はこの性格が、特に、青春を送った日々には重荷となって苦しむ葛藤の元でした。

 ある時、「細かな揺れ、振動が、全体を形作る。」そんな記事を科学雑誌で読んだと記憶しているのですが、この情報に、ひどく感動したことを思い出します。
〈物質の最小単位である「分子」。その分子は幾つかの原子の集合体であり、その原子は内部エネルギーにより振動している。分子の構造は静的ではなく、動的なものである。〉これが自身の覚醒の言葉となりました。
この世界の形作られた全てのモノ、目に見えないその極小の部分と、これも人間の目には見えないいくつもの未知の世界、宇宙の原理と関連し、結ばれて存在している!
もしかしたら細かなことを気にしてしまう自分の性格が大きく変わることができるかもしれないと、少しの光を得た、解放的な心持ちになれた言葉との出会いでした。
 細かなことに目を向けがちな人間。
そしてそれに包み込まれて、外界との間に意識しない閉じた扉を作ってしまう。
でも、小さな現実のことと大きな未知なることとは繋がっている!
小さな世界の中に全てがあり、大きな世界が既に含まれている。
さて、小さきものと大きなものとをどう結び付けるか?それがより解放へ向かう道だと信じて、今日も大いに「揺れ」ようと思っています。





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