八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.93


【掲載:2017/03/12(日)】

音楽旅歩き 第93回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【裏方の仕事は偉大です】

 華やかに繰り広げられるイベント。慎ましやかに営まれる祝い事。
私たちにはいつかは公的なものとして、あるいは私的なものとしてかもしれませんが、人前に出るという、広い意味でも狭い意味でも社会(世間)の注目の的となる機会が訪れるものです。それは、ご近所の集会、意見を交換する会議の場、あるいは喜びや楽しさいっぱいの結婚式や地域の行事、また悲しみや敬虔な思いでのお葬式などであったりします。
そういった場は身近に沢山あるはずです。
私などはそれらに加えて演奏するという場、「ステージ」を数え切れないほど多く持ちました。
それらを通していつも感じることなのですが、自分自身のやるべき仕事(役割)だけに集中力を注ぐということでなく、できる限り周りにしっかりと目が届くようにしていたいですね。
全体が見えない状態になることを避けたいと強く思います。
 「表」には「裏」があるものです。表舞台で注目を浴びるその裏手ではそれを支える人や思いがあります。
それも実は一つや二つといったものではなく、数え切れないほどの「仕事(役割)」によって支えられています。

 音楽のステージでは、それはもう一般的な想像を超えての仕事分担の多さです。
「合唱とオーケストラ」による大規模な演奏会を例に取ってみましょう。
演奏会当日だけでなく、それ以前の練習段階から既に幾つかの重要な仕事が発生しています。
演奏会に向かってのメンバースケジュール調整。
練習場の確保、楽譜の手配、各パートにおけるリーダー決め。
会計、メンバーの出欠確認、広報とその報告(チラシ作り、情宣)、それらのことを「合唱側」でも「オーケストラ側」でも行わなくてはなりません。
また、当日ステージ上のあらゆる問題に対処し演奏に対する準備を整えるのは「ステージマネージャー」の務めですが、この人選や打ち合わせも事前の大切な仕事です。
これだけでも、すでに専門域に属する仕事です。
この段階で全てが整い、本番の演奏に充分なる備えとなっていなければ良いステージには成り得ません。
 さて、これで終わりにはならないのですね。
それからがまた大変です。演奏する側の準備が整っても、それを演奏する場、ホールの裏方さんとの協働作業が待っています。
実は、このホール側との遣り取りが一番大切だと私は考えています。
練習成果の100%を出せるか出せないかは、このホールとの協和性が必要です。
大きく分けて「音響」と「照明」とに別れます。
それはステージ上の立ち位置、座る位置としてのひな壇の種類と設置場所であり、それに当てる照明です。
それらの判断は経験と熟練よって裏付けされたものですが、それと演奏側の要求が協和するよう調整します。
よく知られたことですが、実は「表舞台」とは「裏舞台」とも言える「裏方さん」との協働で成り立っています。
「裏方」を知ることが大事です。
できれば裏方の経験を通して表に立ちたいものです。
それほどに「裏方の仕事は偉大です」。





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