八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.99


【掲載:2017/07/04(火)】

音楽旅歩き 第99回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【イタリア印象「基層は優しさと人間好き」】

 「マントヴァ室内楽フェスティバル」に出演のためイタリアに渡ったのですが、イタリアの印象を書いてみたいと思いました。
旅の楽しみ、面白さは最終的には「人」ということになります。
由緒ある建物や、風景を見るだけでは何か物足りない。お土産を買ったり、飲食する、その際お店で出会う人に「面白さ」が始まります。
そこに住む人と接することで旅の味わいが深まるというものです。
 今回も演奏会を通して「イタリア」の人たちとの印象深い出会いがありました。
とはいえ、イタリア人といっても人それぞれには個性というものがありますから、ある人だけの印象で「イタリア人とは云々」というのも行き過ぎかもしれません。
しかしまぁ何度か訪れている国、その共通性は今回もあったということで書いてみようと思います。
 私が出会ってきたイタリア人は一言で言えば「明朗で人懐っこい」ということでしょうか。
例えば専門家、学者風に最初は感じても少し経てば「打ち解けて陽気な部分」を見せる、といった具合です。
とにかく人間に対して「基層の優しさ」を感じるということに尽きます。
ホテルのご主人やスタッフがそうでした。
我々のメンバーも直ぐに親しくなりたいという性格者が多いのですが、それに勝ってイタリアの人は「仲良しになりたい人」たち。今回も滞在中、緊張感などすっ飛ばすような空間でした。
 もっとも印象的に残っている人といえばフェスティバルのスタッフであったニコロという青年。
彼は我々の担当として最後まで私たちのために働いてくれたのですが、その働き振りはしっかりしたもので、キッチリと事を運ぼうとします。
少し堅物にも見えるのですが、専門の大学で勉強したということなのでこれは学者としては当然の性格なのかもしれません。
この彼、我々が演奏会を重ねる毎に様子が変わります。
その変貌によって私たちの演奏も変わっていったとも言えるのですね。
一つのステージが終わる度に「いい顔」になっていくんですね。
彼、フェスティバル最後の私たちの演奏では、我を忘れて一生懸命自分のスマートフォンで我々を動画で撮っていました。
これには驚いたと同時に「笑うしかない微笑ましさ」です。我々の演奏が余程気に入ったのでしょう。
 もう一人のイタリア人、友達のサブリナ〈しっかり者のヴェネツィアのガイドさん〉。
彼女は夫を伴っての久しぶりの再会だったのですが、我々の演奏に大粒の涙を流します。
「ワーン、ワーン」のごとく流します。
それを見て合唱団のメンバーがまたもらい泣き。

フェスティバルの要人(フェスティバルの総監督カルロさんやそのスタッフ)も挨拶の時は紳士的な表情なのですが、いざ演奏について語るときは本当に表情豊かな表現をします。
私たちの演奏に対しても敬意をもって実に真摯に、かつ親しみの笑みを浮かべて喜びと称賛との言葉を語るんですね。
人前で自分の感情を飾り気なく、ありのまま出すイタリアの人たち。
イタリア人って、好きですね。





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