八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.108


【掲載:2017/11/14(火)】

音楽旅歩き 第108回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

東京公演とその後の癒し旅

 「東京公演」が終わりました。
大阪を拠点として演奏活動を行っているのですが、東京での演奏は「今」を知る上でとても興味深く、聴衆の反応も様々に幅広く感じるものですから大事な公演としてほぼ一年毎に続けるようにしてきました。
スケジュールの関係で昨年は飛ばし、二年半振りの公演となった今年。

 今回のプログラムは日本の誇るべき三人の作曲家による作品の演奏。それぞれに個性に溢れ、様式的にも新しく、またその密度の高い音楽の流れに聴衆はどのように反応するか?渾身の棒、そして演奏だったと思います。
作曲家のお三方もご来場。

それとて珍しいことのように思うのですが、作曲家ご自身を前にしての演奏はこの上なく贅沢で、はでやかなコンサートとなりました。

 最初のステージはア・カペラ(無伴奏合唱曲)での難度の高い、魂の叫びを表現した寺嶋陸也「ざんざんと降りしきる雨の空に」。
中原中也賞を受賞した南三陸町の詩人、「トゥレット症候群」という障害に悩んだ須藤洋平氏の詩集から4篇がテキストとして選ばれています。

 第二ステージは西村朗「水の祈祷」(歌とピアノとグラスハーモニカによる神秘的な祈りの世界)。
終盤には18個のワイングラスが妙なる響きを生みだして陶酔の世界を創ります。

 最後のステージでは、華やかで、そして娯楽性の高い歌と踊り、色彩的な照明を駆使しての新しい合唱の形、千原英喜の「白秋・東京雪物語」です。
聴衆の反応は想像以上のもので、アンケートからも、後にインターネットで流されていた感想からもたいそう好評の内に聴かれたことがわかり、公演の意義もあったと胸をなで下ろした次第です。

 大阪から東京への移動は、飛行機や新幹線を使うわけですが、早く、便利になったとはいえまだまだ疲れる長旅ではあります。
旅疲れの後に「本番」、そしてレセプションと続くのですから私も団員も疲れ方はひとしおです。
というわけで、その後は心身を休めようと一息入れます。
先ずはやはり温泉、ということで、最近「お気に入り」の一つとなった熱海の宿。
その源泉と相性も良く、また食事も考え抜かれた感心のコース料理。
その良心的なサービス、接客に一泊とはいえ心地良い宿泊となりました。
さて、こののち家路へと向かうのが通常かと思うのですが、同行したメンバーは「では三島へ」と私を導きます。
富士山の街ですね。三島については以前にもこのコラムで書いたと思うのですが、東京→熱海→三島コースは「お決まりコース」となったようです。(関連コラムはNo.82とNo.103)
人・人・人の緊張感溢れる東京。
観光客でにぎわいを見せてはいるものの、心身を癒してくれる温泉町「熱海」、そして静かで富士山からの恵みの湧き水が滔々と湧き出る街「三島」、その佇(たたず)まい。
それまでずっと頭の中を駆け巡っていた「東京公演」の満ち足りた一日の有様が、走馬灯のように心地良く思い浮かぶ「旅」となりました。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ