八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.109


【掲載:2017/12/10(日)】

音楽旅歩き 第109回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

聴衆としての層が厚い東京

 前回は私が主宰する「大阪コレギウム・ムジクム」の東京公演のことを書きました。
今回は、同じく私が主宰する「東京コレギウム・ムジクム合唱団」の演奏会での所感なども合わせて、もう少し書いてみます。
名前が似ており、解りにくいかもしれませんがおゆるしを。
大阪を拠点とする団体と東京で活動する合唱団の違いです。
その「東京コレギウム・ムジクム合唱団」は私が東京で開講した「合唱講座 in 東京」の受講生が中心となって活動を始めたもので年二回の定期公演を行っています。

 この2つの合唱団が、それぞれ11月中に東京で演奏会を開きました。
客層は重なるかもしれませんが、それぞれに工夫を凝らしたプログラムとしましたからきっと各々違った趣での興味ある公演になったのでは、と思っています。
私が指揮する「東京コレギウム・ムジクム合唱団」とか「名古屋ビクトリア合唱団」、そして「京都C・モンテヴェルディ合唱団」で組むプログラムの特徴は、前半が「洋物」、そして後半が「和物」というもの。

 「洋物」とは西洋の古い歴史的な曲を聴いて頂きたいとの思いから選んでいます。
それらの選曲はそういった曲がお好きな方々のためということもありますが、合唱団にとってのテクニック向上との目的もあります。
ハーモニーづくり、これに尽きます。
ハーモニー作りとは、なんて書き始めるととんでもなく長くなってしまうのですが、要するに歌い手として(合唱団員としては当然ですが)必要不可欠なテクニックです。
この、日本人にとって、ある意味不得手な分野を体験してほしいという目的があります。
声と声を一緒に合わせれば(歌えば)、とにかく合唱になるということにはなりません。
洋物には基本となる響き作りがあり、それによってハーモニーというものが成り立っています。と、書きながらこの説明不足にジレンマを感じますね。
「ハーモニー」の重要な内容についてはまた機会をつくって書いてみたいと思います。
要するに、音楽の歴史を追ってプログラムを作る。
その始めは洋物の基本となる名曲から、ということですね。

 後半の「和物」についても幾つかの問題を含んでいるのですが、テキスト(詩)は日本語ということで、洋物に比べれば聴きやすいでしょうね。
でもやはりそれでも聴きやすいものとそうではないものとに分かれます。後はどのようなスタイルの曲を選ぶかです。
合唱のコンサートといえば「合唱好き」の聴衆が集まります。
当然と言えば当然。しかし少し問題なところもあって、例えば、〈並びが整っていない〉、〈楽譜の持ち方がそろっていない〉、〈体が揺れている〉、とか、「音楽」とは少し離れた意見が出て来ることがあるのですね。
「形にこだわる」ってことでしょうか。
東京の聴衆からは本質的な感想が多かったです。
決して聴きやすいとは言えない曲についても、しっかりと特徴を掴んで楽しまれているようです。
聴衆の層は厚い、そう実感した二つの演奏会でした。





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