八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.111


【掲載:2018/01/07(日)】

音楽旅歩き 第111回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

歴史と料理、そして都市計画の街へ

 年末からの「年越し旅行」をどこにするか、それをなかなか決めることができませんでした。
ギリギリまでスケジュールが入っていましたし、気持ちに計画を立てる余裕がなかったからです。
決まったのは本当に年末。出かけたのは31日の大晦日です。
30日に発ちたかったのですが、切符が取れず仕方なしにこの日になりました。
さて、予定地は今年こそ石垣にと思っていたのですが、私の体調、および帰阪して直ぐの練習もあって遠出は無理だとの話になり、行き慣れた街の一つである「金沢」ということになりました。
もう既に何度も訪れている街という安心感もあって「行こう!」と決定です。
行ってみて驚きました。31日、1日、2日は街は静かでした。
観光地としては訪れる人も少なくなったのでは?と思いながらその静けさに満足しながら歩きます。
しかし、周りを見渡せば新しい店もでき、装いも新たなビルディングも立ち並んでいる街に様変わり。
お店の中はお洒落で、そして迎えてくれる店員さんは気さくで、サービスを心掛ける気持ちも判り「来て良かった」と、金沢に決めたことに胸を撫で下ろした次第。
観光客の数に関心を向け、さっそくタクシーの運転手さんに聞いてみます。
「減ってはいませんね。安定していますよ」との返事。
継続性、すなわちリピーターが多く、未来志向的な都市計画もあって、今後も観光客の増加が見込まれるのではないか、との予想でした。
その穏やかで誇らしげな口調にしばし耳を傾けました。
「今」より5年後、10年後、いや50年後に明るい希望を感じることのできる「今日」の繁栄と感じている運転手さんではありました。

 さて、しかし元旦の我々の「宴」は少しヒヤヒヤものでした。
営業している店が少ないこともありますし、料理のネタや、対応するフタッフ(料理人、客担当の店員)の人員確保など正月は難しいのではと思いながら以前行ったことのあるお店を予約。
やはり心配は当たっていて、他の客(遠く広島から来たという家族)からクレームが付いたのを、たまたま通りかかった私の仲間が見ています。
お客の言い分は「楽しみに来ているのに、料理の出るのが遅い」「サービスに誠意を感じない」という趣旨だったらしいです。
無理もありません。広い店なのにフロアーに二人、厨房の料理人二人と、手慣れない人がもう一人いるだけ。
これでは対応は不可能だろうとメンバーと話していたところでしたから。
我々が店を出る時には料理長自ら丁寧に謝りに来られたのですが、私たちは皆揃って笑顔、そして「お疲れ様」「大変でしたね」とのねぎらい。
我々は気持ちよくお店を後にしました。
その後3日には人が溢れる繁華街と化しました。店も活気を見せて賑わっています。
今このコラムを書いている4日には雪が降りました。街は美しく雪化粧。
歴史、四季折々の料理、そして適度な広さの街と都市計画。
これが観光地「金沢」の魅力なのでしょう。その良さを感じさせる旅でした。





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