八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.123


【掲載:2018/08/05(日)】

音楽旅歩き 第123回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

歌劇(オペラ)の演出はハラハラ・ドキドキ・ワクワク

 クラシック界での大きなイベントと言えば歌劇(オペラ)ということになります。
日本の西洋音楽受容の歴史(と難しい言葉を使いましたが、要するに「どう音楽を我々が受け入れたか?」のことですね)では、
ピアノやヴァイオリンといった楽器と共にオペラが早くに取り入れられてきました。
しかし、一般的にはなかなかオペラが浸透することなく〈長きに渡り普及・振興を促そうとするも及ばず〉が続いていました。
その原因は日常的に、歌による劇に馴染めなかったからだと思えます。しかし、いつ頃かオペラ熱が高まり始めました。
それまで一人での演奏(独唱、独奏ですね)、大合唱やオーケストラ(大合奏に合唱付き)などが好まれて演奏されていたのが徐々にオペラ上演が大きく盛り返してきた、
台頭してきたというのが我が国の音楽界の動きです。
オペラ関係者のたゆまぬ努力が実ったものと言えましょうが、また、
音楽愛好家がそれまでの演奏会に対して興味の対象を更に大きく広げ始めたのがその原因かと思われます。

 私の活動の原点は小規模なオペラ上演を目指したところにあるのですが、始めにも書いたように我が国では上演に必要な数々の専門的ノウハウ、
そして裏方の人材など、様々なものが不足していて多くの問題が立ちはだかっていました。
私は〈時期を待つ〉しかなかった、というのが偽らざる経緯です。
今回、意を決して〈オペラ〉を上演することにしました。
9月上演なのですが、今、その稽古が佳境に入ろうとしています。
オペラは面白いです!。とにかく五感で楽しんで頂くことのできる舞台ですから。
そして更に面白いのは選んだ演目が我が国の第一線で活躍されている作曲家(西村朗)と詩人(佐々木幹朗)による新しく書かれたオペラなのですから。
私の気持ちは緊張するものの、ワクワク感が膨れ上がってきています。

 取り上げる曲は、和歌山県御坊市にある道成寺にまつわる古い話「安珍・清姫伝説」を題材としたもの。
里の庄屋の娘「清姫」が修行中の僧である「安珍」と恋に落ちる。
しかしながら僧の身分である安珍は深く悩みながらも無情にも清姫を避ける。
清姫は安珍を深く慕うゆえに蛇に変身し、愛と嫉妬が絡み合い、そして最後には安珍と共に天上に召される、という話。
言い伝えには幾つかの異なった結末もあるのですが、とにかくこの題材は舞台物としては誰もが注目する内容を含んでいます。
純真な愛を貫いた「清姫」、僧として深く悩む「安珍」、舞台となる道成寺の炎上、逃げ惑う安珍が隠れたとされる境内の大鐘、
その大鐘に変身した清姫(大蛇)が巻き付く、劇的な要素で満載です。

今年の夏は暑いです。
猛暑が続いています。この時期に私の体も熱く滾(たぎ)ります。公演に向かって、この舞台の演出に燃え上がります。
このオペラの新たな上演が我が国における演奏史のなかで意義有る、興味ある一つとなれればと願って、創り上げていこうと思っています。





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