じゅずシュッツ・番外編


イギリス・アイルランドを考える

原田 匠彦



第二歩 アイルランド


 この連載を「イギリス・アイルランドを考える」としたのにはわけがある。
現在アイルランド(北部を除く)は独立国であり、イギリスではない。
しかし、アイルランドはやはりイギリスと良くも悪くも関係が深いため、この連載でアイルランドのことを全く書かないわけにはいかないし、ぼくの楽しみも減ってしまう。
アイルランドのことをも書いているのに、「イギリスを考える」などという題にするのは、アイルランド人に対してはなはだ失礼である。

 アイルランドという国がまずどこにあるのか、おわかりでない方もいるかも知れない。
アイスランドと勘違いする人も多いと聞く。
 世界地図を見ると、フランスから海を隔てて北部にブリテン島があり、その島にはスコットランド・ウェールズ・イングランドの3つの国が存在する。
 さてブリテン島の西に、北海道ほどの面積の島があるのだが、これがアイルランド島だ。その島には北部に北アイルランド、南部にアイルランド共和国が存在する。
イギリスとは、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドの4つの国からなる連合王国である。
何か教科書っぽくなっているが、このことはぜひ頭に入れておいてもらわないと、話が進まなくなるのだ。

 アイルランドは20世紀初めまで、イギリスであった。
むしろ実際はイギリスの植民地であったという。
イギリスは、事実上イングランドが統治していたことを考えればスコットランドもウェールズもアイルランドと立場は同じだったかも知れない。
しかし、ブリテン島の3国がプロテスタントの国であったのに対し、アイルランドはカトリックの国だった。

このことが、今なお北アイルランド紛争に代表される悲劇をもたらしているのだ。
アイルランド北部のアルスター地方は、イギリスへの低抗の中心地だった。そのため、イギリス政府はブリテン島から多くのプロテスタント移民を送り込み、この地方は次第にプロテスタントの支配地域へと変っていった。

19世紀には、アメリカ合衆国の独立やフランス革命などに刺激されて、アイルランド民族独立運動が繰り返された。そして 1921 年、ついにアイルランドは独立する。
しかし、アルスター地方のプロテスタント(その多くはブリテン島から移住して来た人々の子孫なのだが)はイギリス領に残ることを要求した。
そうしてアルスター地方のうち、プロテスタント住民が過半数を占める地域がアイルランドから分割され、現在のイギリス領北アイルランドとなったのである。

それ以来、カトリックはアイルランド全てのイギリスからの独立を求め、プロテスタントは北アイルランドの存続に必死になっている。これが現在も続いている「北アイルランド問題」なのである。

今日の歴史の授業、これでおしまい。

つづく





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