つれづれ
以前から、海外の教科書を見たいと思っていました。
私はヨーロッパへ音楽演奏の関係で行くことが何年かに1度あり、
そのたびに教科書をどっさり買ってはいました。
ところが、ある時、「教科書図書館」というものが東京にあると知りました。
「教科書研究センター」という建物の2階に、あります。
2年越しくらいでしょうか、ようやく先日、訪問することが出来ました。
残念ながら3時間ほどの滞在でしたが、実に実りある時間でした。
簡単にレポートさせて頂きます。
教科書図書館とは †
場所は、ここです。住吉駅か東陽町駅が最寄りです。
私はバスを使わず東陽町から歩きました。徒歩15分くらいだったでしょうか。
建物の中には、教科書関連の組織がいくつか入っています。

入口手前で荷物をコインロッカー(お金は戻ってきます)へ預け、
受付で名前などを記入してバッジをもらい、中に入ります。
入口には案内があったので、もらっておきました。
図書館の案内には、まあ、著作権などないでしょうから、館内の様子について、以下にお見せします。

基本的に、筆記用具以外はロッカーに預けることになりますが、
パソコンはOKでした。
たくさんの資料! †
さて、入ってすぐの所になにやら資料が…
「フランスの教科書制度」「北欧の教科書に関する総合的研究」…
また、その他にも
「理数教科書に関する国際比較調査公開シンポジウム」「日本の教科書」…
こういうのを、知りたかった!!
聞いてみれば、購入できるということなので、少しでも欲しいと思ったもの全てを購入しました。
- 「イギリスの初等中等教育に関する調査研究報告書」
(教科書研究センター, 2011, 151ページ)
- 「フランスの教科書制度」
(諸外国の教科書に関する調査研究委員会, 2007, 104ページ)
- 「ドイツの教科書制度」
(諸外国の教科書に関する調査研究委員会, 2003, 136ページ)
- 「北欧の教科書に関する総合的研究」
(教科書研究センター 企画・発行, 2007, 248ページ)
- 「ロシアの教科書制度と特色ある教科の教科書」
(教科書研究センター, 2006, 280ページ)
- 「理数教科書に関する国際比較調査公開シンポジウム≪理科の部≫」
(教科書研究センター, 2010, 96ページ)
- 「理数教科書に関する国際比較調査公開シンポジウム≪算数・数学の部≫」
(教科書研究センター, 2010, 94ページ)
- 「諸外国における教科書制度及び教科書事情に関する調査研究報告書」
(教科書研究センター, 2000, 57ページ)
- 「新しい時代に即した生徒の学ぶ意欲や考える力などを一層高めるための中学校数学教科書の研究開発」
(中学校数学教科書研究会, 2007, 476ページ)
- 「新しい時代に即した児童の学ぶ意欲や考える力などを一層高めるための小学校算数教科書の研究開発」
(小学校算数教科書研究会, 2006, 399ページ)
- 「数学の力に基づく数学教科書・数学教科書教師用指導書の分析」
(中学校数学教科書研究会, 2007, 264ページ)
- 「教科書の耐久度についての調査 調査結果報告書」
(教科書研究センター, 平成12, 122ページ)
- 「電子媒体を活用した教科書展示に関する調査研究報告書」
(教科書協会, 2003, 30ページ+資料CD付き)
- 「教科書作成のしおり 平成22年度改訂版」
(教科書研究センター, 2010, 662ページ)
- (絶版のためコピー)「新・日本の教科書」
(教科書研究センター, 2004, 103ページ)
結構、国語関係の資料も多かったのですが、算数・数学関係で凄い量なので今回は無し。
分厚いものには2000円ほど、薄いものは400円くらいの値札が。でも値札のないものが多い。
でも1万円を軽く超えるだろう…さすがに痛いな…と思っていたら、
なんと、いくつかの資料は在庫があれば無料!
(「カケンのものは無料」と言われて「ああ、科研ね」と思っていたのですが、
改めて見てみたら、どこにも科研だと書いていない…ので理由はよく分かっていません。)
それらの事情で半分以上が無料で手に入り、
結局、(絶版のもののコピーも含めて)8000円程度の出費で済みました。
量が量なので、購入やコピーの時に少しバタバタしましたが、
窓口の方は親切に対応してくださいました、感謝。
現在の日本の教科書のこと †
さあ、奥にある海外の教科書へ…と思ったのですが、手前の、日本の現行教科書が気になります。
改めて高校数学の教科書を全社見てみました。
教科書はだいたい見ていたつもりでしたが、まだ知らないものが。
1社で2種類出していたりもしたんだ、と新たに発見。
これらをいろいろ見ていると、来年度(つまり2012年4月)から実施される、
新課程の教科書が気になります。
新課程の13th-note検定外教科書では、全て、指導要領の順番通りに並べたけど、他はどうなのか?と。
すると、結構、指導要領通りじゃないんですね…
いや、その方が作りやすいとは私も思ったのですが…。
すぐ隣には、教科書の検定結果などの詳細を見ることが出来ました。
詳しく、どういうことにどういう修正をかけられたか見られます。つまり
- 検定前の記述
- それに対して付けられた検定委員会からの意見
- それを受けて行われた編集
これらが、一覧表になって置いてあります。
改めて、指導要領の文言がどういう意味で書かれているのか、理解が深まりました。
また、少し隣りに目をやると、教科書の編集者が誰がどこを執筆したか、なども見ることが出来ました。
きっと執筆は章ごとに分担されているんだろうな、と何となく予想していましたが、
具体的に、誰が、どこを書いたかまで分かるのは、なかなか新鮮でした。
海外の教科書は駆け足になってしまい… †
最後に、というか本日のメインである海外の教科書を…と思っていましたが、残り10分…
続きは次回に回すとして、とりあえず駆け足で眺めてから帰ることにしました。
世界中から教科書が集まっていました。ざっと眺めただけですが
韓国、インドネシア、マレーシア、モンゴル、オーストラリア、
イギリス、フランス、スイス、ドイツ、…
アメリカ、カナダ、ブラジル、それからアフリカもちょこっと。
スイスとドイツの教科書はいくつか持っているので、同じものがあるかと思って見ましたが、見当たらず。
州ごとに違うから、相当な種類の教科書があるだろうし、一部しか置いてないようです。
まあ、仕方ないですね。
(受付で聞いたところでは、古い版ならば書庫にあるようですけど)
というわけで、あとは急いで荷物をまとめて、帰りました。
15冊分の本が、重かったですが……
おわりに †
短い滞在しかできませんでしたが、感想としては
「教科書について、教育について考えるならば、一度は訪れるとよい場所」と感じました。
教科書検定がどのようになされているか、誰がしているのか、
どんな教科書があるのか、あったのか、海外と比較してどうなのか、
それらから見えてくる日本の教育、海外の教育との違いは何か、など、
そういった疑問に答えてくれる「原資料」がたくさん置いてあります。
そういう場所であるためでしょう、結構、図書館には人がいました。
結構…とはいっても、私が帰る14時すぎの段階で20人弱でしたが…
(入館バッジの番号で分かります)
でも基本的に皆さん長期滞在なので、広くない館内はそこそこ人がいる感じでした。
私も、また後日、訪問しようと思います。
その前に、大量に入手した本に目を通しておきたいですが…
ちなみに、ちなみに、所蔵している図書の検索を、こちらの「教科書目録情報データベース」からできます。
何かの参考になれば。