八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.107


【掲載:2017/08/24(木曜日)】

やいま千思万想(第107回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

人、街はどのようにしてつくられ どこに向かおうとしているのか?

 時折、月を見上げる。
あるいは石垣島のように満天とはいかないが、街の明かりに薄く見え隠れする星を眺めることがある。
そういったときは少し疲れている時だ。
疲れた頭で月や星を眺めていると、人間の小ささや、この地球の不思議についてついつい思いを致すことになって、その疲れもどこか遠くの果てへと飛んでいってしまうような気になるから、時折見つめてしまう。
人間って、常に何かの不安に苛(さいな)まれるものです。
闘っていると言ってもいいかもしれない。
年を取れば取るほど不安も多くなり、深まり、また大きくなっていく。不安はストレスから来るのでしょう。
ストレスなしに過ごせるってことは人間社会では有りはしないのだと、いやと言うほど知らされてきた人間。
だからこそ、ストレスがなくなるようにと、また軽減されるようにと、思考法を探し出そうとして四苦八苦してきたというのが人間でしょう。
で、私の場合は月や星を眺めながら少し気持ちが落ち着いてくると、思いの方向は一転して再び身近なところを見つめることになります。
結局ストレスの元探りがまた始まるのです。

 ある詩を思い出しました。曲を付けられたその詩が印象深く残っています。
若い人たちに向けて書かれたその曲は力強く明るい未来への希望のメッセージを与えているのですが、「初心のうた」と題された詩の始まりは次のように綴られています。
「どこをとおろうと/ほしをみあげ/ひとりひとりつきとめよう/まちやくにのしくみを/ ころしやつくりかりたてる/くにとひとのしくみを」(月刊雑誌『教育音楽』2001年8月号の中学生向け付録楽譜のために作曲、曲は信長貴富、詩は木島始)。
楽譜を見たとき胸が締め付けられた記憶があります。
詩も曲も印象深く残るもので、何度か指揮をしていますから時々思い出しては人間社会のことをぐるぐる頭の中で巡らせます。
若い人たちに向かって「知ろうよ、街の事について、人間のことについて」とエールを送っています。
合唱界では人気の曲でしょう。
コンクールによってよく知られるようになり、後になって歌った人々が詩の内容について改めて考えさせられた、という意見も聞きます。

 私の思考はいつも次のような軌跡をたどります。
宇宙の始まりは?/宇宙は広がり続けている?/宇宙の終わりは?/宇宙の中の銀河系/その中に活発にうごめいているひとつの星、地球/地球の成り立ちは?/大きな大陸から引き離され、奇跡的な出来事が重なって地球上でも珍しい場所となった「山」と「水」の国「日本」/その場所に住む人々は何処から来たのか?/人が住み、村、街がどのように形成されたのか?/社会をなした集団の規範とは?そしてそれらは何処へ向かおうとしているのか?/暮らしの平安とは?/人間にとっての安心とは?/そして地球の平安とは。
私は核心の思いへと引き込まれて行きます。
奇跡の生を受けた人間、それら「皆」が平安であることを未来に望もうと。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ