八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.132


【掲載:2018/10/04(木曜日)】

やいま千思万想(第132回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

オペラ作りに必要なのはやはり専門家の結集とその協働です

 この3ヶ月余り、オペラの制作に当たっています。
オペラ作りは多岐にわたって仕事が多い超忙しの毎日です。
クラシックの世界で一番楽しく、また聴き応え、見応えがあるのはやはりオペラということになっているのですが、しかしこれが一番厄介な音楽作りであることは間違いありません。
とにかく、現実的には人手を多く必要とするためお金がかかります。
それは大道具、小道具、照明といった劇場関連の専門家。
そして肝心要(かなめ)の演奏家(ソリスト、合唱団、オーケストラ)の数も相当多くあり、その練習回数や練習場の確保にもお金が必要です。
頻繁に、日頃よく催される室内音楽とは音楽的規模もスタッフの数も違っており、制作過程が似ている「映画作り」かも知れません。

欧米諸国では地方都市にも、小さいかもしれませんが必ずと言って良いほど「歌劇場」があります。
大都市では毎日のように有名な作曲家による大かがりで、観どころ、聴きどころ満載のオペラの演目が並びます。
異文化なのだから当然、と言ってしまえばそれまでですが、日本ではそれらに追従するかのように、
いや、元々有ったかのように取り組みます。そのオペラがクラシック音楽界では幅をきかせています。
私は、グランド・オペラ(19世紀のフランスに流行した正統的で大規模な歌劇、
歴史的題材による4〜5幕の構成で、独唱、合唱、そしてバレエを多用する絢爛豪華(けんらんごうか)なオペラ)の大々的な演目には興味が薄く、
ヨーロッパでも余りなじみのない室内楽風のオペラ(時代的に言えばバロック期〔1600〜1750〕)の作品に普遍性と未来性を感じて、
その様式感を活かせるようなオペラの演奏を取り上げたいと常に考えていました。

 これまでにも幾つか室内オペラ風な作品を取り上げたり、普通の合唱曲(オーケストラ付きもあります)にオペラ風の演出を加えた演奏もしてきました。
音楽への理解、舞台芸術としての面白さ、楽しさを満喫して頂きたいとの思いからです。
今回、作曲家ご自身から私たちに演奏をとの依頼があって本格的に室内オペラに取り組むことになり、これまでにない月日を練習に費やすことになりました。
そして仕上がり、明日本番を迎えるという日にとんでもないものが近づいて来ていたのでした。

 *このコラムは、演奏地であった京都から早々と帰宅して自室で書いています。
間宮芳生作曲〝合唱のためのコンポジション第5番「鳥獣戯画」と、
西村朗作曲〔台本:佐々木幹郎〕〝二人の独唱者、混声合唱とピアノのための室内オペラ《清姫—水の鱗》(2011)〟
の公演を延期せざるを得なくなったからです。
台風24号がまたまた日本を横断しました。
そのため全交通機関が次々と運転を取りやめ、苦渋の選択ではありましたが、残念ながら公演は先延ばしと決定。
この様な決定となったのは長い演奏活動の中で初めてのことです。
延期になった公演日までこの演奏の楽しみはお預けとなってしまいました。





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