八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.137


【掲載:2018/12/27(木曜日)】

やいま千思万想(第137回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

「編曲」することの楽しさと難しさを味わっています

 最近、しばらく遠ざかっていた「編曲」の必要に迫られています。
ある意味、作曲より楽だと思われることもありますが、原曲がある以上、そこからどのような距離感を持って取り組むかが問題となる点、難しくもあります。
私の場合、ある曲を合唱用とかオーケストラ用とかに編曲することが多いのですが、それらは多彩な音響づくりが可能で楽しい作業となります。
原曲の雰囲気は保ちながら新しい音響としての世界を加えてみる、それは音楽家、特に棒振りにとっては魅力ある仕事の一つなんですね。

 先日、私は「讃美歌」CD第2集目をリリースしたのですが、そこに含まれるオーケストラ編曲もその仕事にあたります。
苦労もありましたが、楽しさの方が優っていましたね。
機会がありましたらお聴きいただければと思います。シンプルに、しかしメッセージとしての音楽がより確かなものになるようにとの編曲作業でした。
石垣のもう一つの新聞に依頼経緯を書いていますが、私の住む大阪府の豊中市から「市歌」を来年2月に発表するための編曲を依頼されました。
話によれば、戦後間もない昭和21年(1946年)に作曲された「市歌」を「72年ぶりによみがえらせたい」と言うのです。
豊中市に住んでおよそ40年にもなりますが、思い出そうとしても「市歌」が浮かんできません。
そういえば聴いたことがないことに気がつきます。
担当の方の話を聞けば、やはり最近は催しものの際にも歌われることがなくなり、
例年私の団体が出演している市の主催演奏会でその曲を「復活演奏」させたいとの熱い想いでした。
その意図と熱意に促されてお引き受けすることを決めました。
これまでにも「大学歌」の作曲や編曲に携わってきたこともあって、勢いよく引き受けたのですが、
担当の方が言うにはこれまでの資料(楽譜や音源)がきちんとした形で残されていないとのこと。

 届けられたのは一葉のメロディー楽譜と一番しか入っていない録音音源。
そこから〈楽譜づくり〉を始めなければなりませんでした。
そこで、編曲にあたって全国の「県歌」や「市歌」を調べてみます。
しっかりと公式のホームページに掲載、楽譜も公開して歌われているところもあれば、
実際は存在し歌われているのに公式サイトのどこにも記載されていないところもあって、その対応は様々です。
公式の行事で参加者全員が歌う。こうした事は形骸化しつつあるのでしょうか。
今回の編曲に際してはその資料化をしたいとの思いもお聞きしているのですが、市民から愛される「市歌」となって欲しいとの願いを込めての今回の私の編曲です。
「歌」というのは難しいですね。
趣味嗜好の問題、それを強制的に歌わされることになれば歌も可愛そうと思う私です。
皆が歌いたいと思う心が一つとなれば良いですね。
意気が揚がり、できれば未来へと向かう希望となるような「市歌」となれれば尚良いですね。
そのような編曲に、と願っています。





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