八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.138


【掲載:2019/1/10(木曜日)】

やいま千思万想(第138回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

オペラ本番を済ませて少しホッとしています

 この原稿は京都のあるホテルの部屋で書いています。
去年の9月30日、台風24号のために急遽取り止め、延期となった室内オペラ、〈清姫—水の鱗〉の公演を控えての前夜です。
先程そのリハーサルを終えて帰ってきたところ。その勢いで書き始めました。
改めて思ったのですが、オペラの公演には野球のフランチャイズのように、いつも同じ場でできるといいなと思います。
今回、前日に本番と同じホールでリハーサルをできたのは幸運なことでした。
この大切さに改めて気づかされました。演奏の良し悪しが大きく変わります。それほどに大切な要素です。
でもこれを実現させようとするにはなかなか難しい条件があります。
費用もそうですが、日本ではそういったコンセンサスを得ることができていません。
そんな事情ですから同ホールでの前日練習もないことが多いです。
オペラの上演には、舞台の設定計画、照明の打ち合わせ、音楽とそれらを合わせて実際ステージ上の動きを確かめるための何度かの練習を必要とします。
それが本番での良い演奏の要(かなめ)となります。
ステージの動きではどのぐらいの距離なのか、時間はどれ程かかるか。
そしてそれに伴う照明効果としてどのような色を使い、登場人物の動きに合わせて追いかけるか。
どのようなタイミングによって背景変化のキュー(照明オンオフの指示)を出すか。
専門家であるスタッフとの綿密な打ち合わせ、そして実際繰り返しの練習が必要です。
それがなければ舞台の魅力は乏しく、感動とはほど遠いものとなるでしょう。
魅せる舞台とするためには最も必要とされるものです。
そのための体制化が待たれますし、また切に望むものです。ホールでの練習にはこれらの工程は欠かすことができません。
総合芸術と呼ばれるオペラ。
歌手や楽器奏者、そして裏方としての舞台制作、演出、照明など沢山の役割分担が必要とされる、協働、連係プレイの充実感たっぷりの合作仕事です。

 さて、ここからの原稿はその延期公演を済ませた翌日(1月7日)に書いているものです。
結果は成功の演奏会となりました。
少し舞台準備に手間取どりましたが、そのあとの運びは見事なもので、
不安な材料を残しながら(やはり少しの動きのズレも生じましたが)百戦錬磨の強者(つわもの)である我が団のメンバーたちは実に見事にそれを乗り越えて魅せ、
映え、舞台狭しとその動きのなかで内容表現してくれた演奏となりました。
脚本を書かれた詩人の佐々木幹郎氏、作曲家の西村朗氏も東京から駆けつけ、演奏後の打ち上げも大いに盛り上がり、演奏談義、芸術談義に花を咲かせました。
〈オペラ〉とは「金食い虫」です。
スタッフを含めて沢山の人手を必要とします。ではありますがとても面白い!
しかし現実的には前に立ちはだかる問題は様々に存在し、それらをプロデュースするのは並大抵ではありません。
それらの真の専門職の育成は必要かと思われます。
大役を果たして少しホッとしながらも、休む暇なく、明日から次の演奏会へと進みます。





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