八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.147


【掲載:2019/6/06(木曜日)】

やいま千思万想(第147回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

文化遺産をどのように維持、育成、発展させるか?

 本紙6月1日付の第一面に、日本ユネスコ国内委員会が5月31日にユネスコ創造都市ネットワークへの新規申請都市に音楽分野で石垣市を推薦することを内定したとの記事が掲載されていました。
これで、ユネスコに市が申請書を提出すれば11月には結果が発表されるそうです。
申請内容には「国内だけでなく世界に対して本市が誇る伝統芸能をはじめとする音楽文化を軸としたグローバルな地域ブランディングを図る」
「古来さまざまな祭礼、舞踏、音楽を伝統として継承、これを基盤として・・・・・・(省略)」
「石垣島の音楽文化の持続と発展のための人材育成などに今後取り組む」ということが書かれているそうです。

 「八重山の伝統とその音楽」の大切さについてはこのコラムで何度も強調してきた私です。
このニュースが喜ばしいものであったことは間違いありません。
同じく朗報がありました。私が住む大阪、その中でも以前長く住んでいた堺(さかい)には世界に誇るべき古墳群があるのですが(日本最大の前方後円墳「大山古墳」(仁徳天皇陵)を含む「百舌鳥・古市古墳群」)、
この地域がこの6月30日から7月10日に開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式に登録される見通しとなったようです。
二重の喜び、誇るべきものとなりそうです。 
そういった認定を受けた地域は公の助成を受けることとなります。
ですが、一つ思い出されることがあります。
それは大阪で起こったメジャーな音楽団体に対する助成打ち切り、大幅削減が行われるという事態でした(世界に誇る「〈文楽〉人形浄瑠璃」もその対象でした)。
しばらく混乱状態が続いた大阪文化。
私の団体は国の文化庁からの助成でしたので直接大きな影響はなかったのですが、それに関係した音楽仲間たちにとっては死活問題。
改めて「助成」ということに対して深く考えさせられた事柄ではありました。
伝統を守り継承していく。
それは「お金」だけで済む話ではありません。
「助成金」によって大きく助けられるのは確かですが、その「助成金」がどのように使われるかが実はとても大切な問題となります。
広く知っていただくためのシンポジウムとかイベントに予算を組むということだけでは根本的な解決にはなりませんし、
「人の育成」に至っては「それを」どのように役立てるか、それはそう容易い問題ではありません。
色々な要素が絡みついているはずです。
文化遺産の健全なる継続と維持、発展。私が提起してきたことは「伝統」と「現生活」との拮抗関係です。「現代に活きる伝統」とは?
大きく歴史を省みれば、「小さな部分(伝統)」が一つの大きな塊(かたまり)へと変化しているようにも見えます。
それは永い年月、何千年という単位でのことかもしれませんが、その方向、「一般化」への変化でしょう。
「部分(伝統)」をしっかり維持しながら、いや、大事に育成、存続させるためにもそれらを「現代」に活きた存在としなくてはなりません。
そのジレンマがずっと続いている私です。

 



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