八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.151


【掲載:2019/8/01(木曜日)】

やいま千思万想(第151回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

皆さんはどれ程、データを基にして世界を正しく把握されてますか?

   読書率が下がってきているのではないか?と書かれることが多いです。
そういう私もこのコラムで書いてきた者の一人です。
読書とは、話題になっている「漫画」や「週刊誌」といった類ではなく、じっくり一冊を読み切るのに数日、あるいは数ヶ月に及ぶといった「書籍」のことです。
「下がってきた」とは何となくそう感じる(私自身が費やす時間が短縮された)、誰かが、あるいは何かの文章で語られ、書かれていたのを私の印象から導いた感想ですね。
しかし、これは不正確ですよね。実際の数字による比較を基にしたデータがないからです。

 数字を見れば、思い込みであったということもあります。
先ずは信用に値する研究がなされたものを良く見て、比較し、判断を下すということが基本ですね。
書店に入って目に入ってくる本はそういったデータに関しての類です。今日はちょっと面白い本を紹介します。
書名を記す前に、本の後ろに書かれている〔脚注〕のところに書かれている文章を紹介しますね。
これが先ず気に入りました。
『本書を書くにあたって、資料を何度も確認し、データを正しく使うことには徹底的に気を配った。この本で、ファクトを間違えていたら説得力がない。誰だって間違うことはある。
出来る限りの努力はしたが、間違いがあるかもしれない。もし間違いを見つけたら、本書をより良くするために是非教えて欲しい。現在報告されている間違いは、こちらのページにまとめてある』。

 徹底して正確なデータを記したいとの思いが伝わってきてつい買ってしまいました。
まだ全部を読んだわけでなく、正直少し懐疑的に見ている私がいますが、面白さは充分に私を満たしてくれています。
〈目次〉を紹介しますね。

第一章 分析本能「世界は分断されている」という思い込み、
第二章 ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み、
第三章 直線本能「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み、
第四章 恐怖本能「危険でないことを、恐ろしい」と考えてしまう思い込み、
第五章 過大視本能「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み、
第六章 パターン化本能「ひとつの例がすべてにあてはまる」という思い込み、
第七章 宿命本能「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み、
第八章 単純化本能「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み、
第九章 犯人捜し本能「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み、
第十章 焦り本能「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み、
そして最終章にはパターン化を止めること、疑うことが書かれています。

 どうでしょう、ちょっと面白そうでしょう。
〈付録〉各国のクイズ解答の結果が書かれています。
日本は正解率が低かった(!)です。
著者は書きます。『事実に基づいた世界の見方を広め、人々の世界にまつわる圧倒的な知識不足をなくそうと決心した』と。
この本の名前です。「ファクトフルネス」日経BP社発行でした。  

 



戻る戻る ホームホーム 次へ次へ