八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.158


【掲載:2019/11/21(木曜日)】

やいま千思万想(第158回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

酒を飲む至福、しかしその始まりと結果は不思議です〜その一

   今日はお酒の話をしたいです。
「酒」って人間の歴史を伝えるものの一つだと思うのですが、どうして酒はこんなに人と歩みつつ、無くてはならないもののようになってしまったのでしょうね。
最近、世間は暗い話が多すぎるような気がします。
政治は勿論のこと、学問や経済も。人間を取り巻くこの世は、現代だけでなく、まぁいつもそうだったかもしれませんが人の心を苛つかせます。
気が重い日々ってありますよね。
そんな中で表にはなかなか出て来ないのですが、そっと人間に寄り添っているのが「酒」。
どんな場面においても、脇役として、また主役としてお出ましになっています。
心を柔らかに楽しくさせ、憩わせ、またある時は人心を唆(そそのか)し、激情させる働きもする役どころです。

 お酒の飲めない方とのお付き合いもあります。
色々な関係で、仕事の上で、ご一緒になり酒飲みの気持ちで語り合います。
正直その方にとっては酒飲みの言動は「解らない」ということになるのかもしれないというのに。〈素面(しらふ)〉の人から見れば実に違和感のある状況でしょう。
その飲めない方のお気持ちは充分に解りながら、少し酒の話を続けさせていただきますね。

 世界中には沢山のお酒の種類があります。
今回は日本酒についてです。(私の酒歴を。先ずスコッチウイスキーからその洗礼を受け、バーボンウイスキーで一旦止まり、その後は日本酒、ビール、焼酎、泡盛、ワインと渡ります。
現在はそれぞれを楽しみとして刻を過ごす、といった酒の遍歴です)

 人が住む土地にはその数だけ酒があるといってよいでしょう。
その土地に行けばその地の酒が欲しくなる、それが酒飲みですね。
歴史に残るような重要事件、または個人的な小さな事件であったとしてもその人物の側らには人知れず酒があった。
酒を飲んだゆえの事件なのか、そうでないか、は定かでなくとも、酒が係わっているのかも、との想像をしてみるのは面白いです。
酒の〈うんちく〉を語るのはよくありません。
熱心に語れば語るほど場は白けてくる、これは私の〈酒場〉での経験です。
それぞれに個人のこだわりがあるからでしょう。日本酒はいま、〈戦国時代〉を迎えていますね。
もう、数え切れない、覚えきれないほどの銘酒と呼ばれる銘柄が並び、その亜流もまた(失礼!立派な日本酒でありますが)数多く生まれて所狭しと棚に並んでいる様は圧巻です。
その中からお気に入りを選んでチビリチビリとやるのも良し。日々銘柄を変えて味を楽しむもまた良し。
飲めばその日の緊張した心もほぐれ、リラックスしていく中で美味しい肴(さかな)に箸を付ける。
「至福の一刻です」、と酒飲みは言います。しかし、その刻が多く、永く続けば暗雲が立ち込める……のもまた確か。
酒はほどほどに。これが「酒飲み」の本道だと悟る今日この頃です。
お酒は「不思議」です。誰がどのようにして発見し、そして飲み始めたのか?
そんな勇気ある人間のことを酒を飲みつつ考えます。  

 



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