八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.161


【掲載:2020/01/09(木曜日)】

やいま千思万想(第161回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

今年もどうぞよろしくお願いします。皆様と共に〔栄え〕を祈願します

   1年が終わるシグナルが私の中で鳴っています。今年もあっという間の時間の流れでした。
音楽では「オペラ」で始まり、年末にはこの時期相応しくないと思われる「レクイエム」、
それもあまり演奏されない曲(私は歴史上大切な名曲だと思っていますが)で締めくくりました。
私の指揮する演奏会はエンターテインメント(人を楽しませるもの。楽しむためのもの。娯楽。)だけでなく、作品が持つメッセージを伝える場です。
作曲家は何を言いたかったのか?伝えたかったのか?それを受けて演奏する私はどう応え、どう表現し、聴衆に伝えようとするのか?それを問われる場でもありました。
書かれた〈文字〉でなく、〈スピーチ〉でなく、〈音楽〉によって発せられるもの。それが演奏会。
〝show and tell〟いわゆる見世物としての〈発表会・説明会〉、ではありません。
その場は音楽によって人の心を動かす演奏表現の現場、ステージです。
表現は〈静かに〉であるか、〈激動的〉であるかはその内容で異なりますが、大事な事、それはそこに真の心からの〈感動〉が生まれるかどうかにあります。
私の受けた感動が、内に発生した叫びの波動となって放たれ、聴衆に届けられようとしているか、それが問われる場であります。
手前味噌と思われてしまうかもしれません。しかし思い返せば、1年を通じて行われたコンサートでの聴衆の反応やその後に頂く感想を受けて感じます。
その全ての公演で私の思いが達成されていたのではないかと。海外からのものも含め、全国から届いたメッセージはとても熱いものでした。
私の中のシグナルを感じつつ思いが巡ります。

 演奏の場は〈社会を映す鏡〉でもありました。
映し出されたものは美しいもの、「心からの優しさに満ちた微笑み」であったり、「聡明で凛凛しい表情のお顔」でした。
時には感動の「涙」に混じって、「哀しさ」「切なさ」「不安」を覗かせる憂いのお顔も有ったりしましたが⋯。
日常の世界から離れて、あるいは離れようとしてコンサートに足を運んで頂いているのに、演奏を聴いて現実が現れ、時には心がかき乱されそうにもなる。
その過程を含めて、私は強く思うのですね。
しかし!最後には心躍る〈夢・楽しさ・希望〉の道が現れるのだと。私自身、そしてお出で下さった聴衆全ての方々に!

 これをお読み頂いているのは新春だと思われます。
お読み頂けたこと、本当に心から「ありがとうございました」。感謝です。
拙い文章ではありますが、新年2020年もどうぞよろしくお願いします。
揺れ動きは音楽だけにあるものではありません。
それらは喜びの感動も生み出しますが、社会全体ではそれだけではない様々な心の動きも波打っています。
人間って心もとなく、厄介なものです。
しかし、面白いです!フニャフニャしながらこの地球上に溢れうごめいています。
「栄え」がありますように。生命の喜びが溢れますように。それらが〈皆〉に訪れますように!  

 



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