八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.164


【掲載:2020/02/13(木曜日)】

やいま千思万想(第164回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

八重山で「日々」の大切さを静けさの中に知り、過ごしたいですね

   本土は厳しい寒さに覆われています。
しかし、私の記憶を辿れば昔はもっと寒さ厳しく、関西でも時には雪が積もって雪投げができたことを想い出します。
いつしか日本は温かくなってきたのですね。「地球温暖化」の話題もあり、これからの気象観測から目が離せなくなってきました。
今は防寒用の服も以前に比べてあまり気にせずに着ています。少し薄着でも問題ありません。
地域的には差があったり、世界の地域についても一様には語ることはできませんが、体感的には今年の「冬」もまた大きな変動の中に包まれているようです。

 「地球」に関する観察は進歩し、多くの人工衛星の利用で太陽系の創世期から太陽系以外の空間のことも推し量れるようになってきました。
新しい報告は本当に驚かされることばかりで、何とこの地球は偶然の重なりで成り立った!ということ、そして他の惑星に比べてなんと恵まれた存在であるかを証明しつつあります。
改めてその奇跡の惑星に感謝し、手を合わせて拝みたい気持ちにさせられます。
大きな大きな宇宙的変動の中にあって、我が地球の寒かったり温かかったりを繰り返す日々に向かってそこかしこに祈りたい気持ちですね。

 永く広い宇宙の時間からみれば「一日」なんて見えて見えない時間。
の体感など有って有るものでもなく、その時間というものがいかに危うく細微な一瞬であることかと思わされてしまいます。
しかし、その一瞬をどう過ごすかが人間にとっての意思。それが人間が知り得る限界でもありましょう。
歴史を担い、継ぎながら世界を創っていく。その単位が「日」ということです。今日も前向きで進みたいですね。

 今、少し短めの休暇を頂いています。美術館に行ってきました。
17世紀バロック絵画の創始者であるイタリアが誇る天才画家、カラヴァッジョ(1571-1610)展です。
私の音楽に確信をもたせ、時空を超えて私の魂を揺さぶり続けている画家です。私の音楽の原点と言ってよいと思います。
西洋と東洋が私の内で繋がりました。
日本の「静」と西洋の「動」の対比、その拮抗です。それまで抱いていた音楽表現法のモヤモヤが一度に吹っ飛び、心が決まった衝撃の出会いです。
彼の絵は光と闇の交錯する劇的な絵画空間、迫真的な動的描写です。日本人が好む「静」の世界から解き放たれる世界でした。
今回の絵画展はカラヴァッジョのわずか60点強とされる現存作品の中から日本初公開を含む約10点、その他、彼に影響を受けた画家たちの作品が並びます。
私の頭の中に焼き付けられていた絵画との再会。
数奇な画家の生涯からその時代と画家自身の運命が押し迫ってきます。その「日々」の濃さが身に染みます。

 今月の末には長めの休暇を頂いています。やっと八重山に行くことができそうです。
そこで過ごす一日一日がどれほど私にとって大切な「実」となるか。
その体感は宇宙の歴史からみれば〈一瞬〉とも言えない微細な時間なのでしょうが、人としての「貴重な日々」を刻みたいと思います。  

 



戻る戻る ホームホーム 次へ次へ