八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.165


【掲載:2020/02/27(木曜日)】

やいま千思万想(第165回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

石垣島の居酒屋が東京近郊に出店。その訪問記

   石垣島行きを前日にして、以前から聞いていたお店に行くことにしました。
東京の合唱団の練習に出かけた際でのことです。
島に滞在している間にお世話になったお店はいくつかあります。気に入ったお店だと毎日のように通ってしまうんですね。
とはいうものの、それらのお店へは行くまでの距離やお料理のメニューによっては当然お店を変えなくてはならないこともあります。
まぁ、順番に回っていると言った方が早いですね。出かけるお店は大切です。
料理が美味しいことは当然として、店の雰囲気、そして応対というのが料理を引き立てるものであることが必要ですね。
ですから、私のお気に入りのお店はお店で働く人の全ての顔が見えている必要があります。
都会では顔を見合うことなく、つまり、目を見ることなく連れの人と、お酒と料理にしか関心がないような風景。
それでは良い時間を過ごせないのですね、私は。お酒と料理は「人」が間にあってこそ美味しい。
別にお店の人とお喋りしなくてもいいのです。その存在感がどの様なものであるかが大切なんですね。

 今度訪れたお店は、石垣のホテルから店まで距離が少しあって(川平でした)、頻繁というわけではなかったのですが、私にとっては居心地の良い「行きたい」お店の一つ。
そのお店のマスターが夫妻で東京に店を出すと聞いて、定期的に訪れている東京なのですから行ってみようと思った次第。
そしてもう一つの理由が。それは本土の人が石垣島へ渡り、お店を出すことが多い中にあってその逆の例となるのですから、これから…が気になるんですね。
地域にどのようにして馴染み、「石垣島の風」をどう吹かすか。
聞く所によれば奥さんの実家の土地のようですから全くの新開発ではなさそう。これからが楽しみ、勝負どころということなのでしょうか。
 石垣の「今」の話へと話題を振る私。伝統や文化論も少し。
私は4年ほど空いてしまっていますから現在はどう変化しているのかが知りたいという気持ちが強い。
話を伺ってますます迅(はや)る思い。しかし結局は私の目で確かめる、やはりこれしかないですね。

 「内」と「外」、この問題はどの分野でも難しいことが起こります。歴史はその繰り返し。よそ者と「内」。
おそらく未来は(遠いでしょうね)その様な分け方は無くならざるを得なくなってしまうとは思うのですが、それまでは「確執」の悩みが絶えないでしょう。
では、どうしたら確執を和らげることができるのでしょう。智恵が必要です。
私はそこにこそ言葉を超えるほどに意思や感情を伝える、仲立ちを図るコミュニケーション道具としての歌(言葉を伴わないものも)や踊り、
そして心から楽しんでいる笑顔だと思うのですがいかがでしょう。
訪れたお店の名は「月桃(サンニン)」。
沖縄そばとチャンプルーを食べ、急ぎ仕事に戻らなくてはならない私たちに(二人で訪れました)夫妻が手を振りながら送ってくれた笑顔がほんとうに素敵でした。
 

 



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