八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.173


【掲載:2020/06/18(木曜日)】

やいま千思万想(第173回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

活動開始とします。万全の対応策をとって

 いよいよ私の関連団体〝Tomas-chor(トーマス・コーア)〟が練習を開始することを決めました。
このコラムを書いている時点でも全国各地の合唱団が練習再開への摸索をし始めているようです。
合唱界は「歌うこと」を熱望しており、いつか、いつに、とそれぞれの思いが溢れて一気に沸き立ったようにも思えます。
ただ、時流に乗ってのことだけで無く、最新の疫病対策を講じての開始であるべきと、我が身にも戒めて事を成していこうと思います。

 6月6日(土)、女声合唱団「コーロ羽衣」を皮切りとして姉妹合唱団へと現在拡げつつあります。
この最初の体験が素晴らしい反応であったことが一気に活動開始へと向かわせる原動力となりました。
広い練習場、メンバー全てがマスク着用、ソーシャル・ディスタンス( 人との距離)を保つ(最近では一メートル以上)は必要でしょう。
いわゆる「3つの密(密閉・密集・密接)」の回避ですね。
〔1〕密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、
〔2〕密集場所(多くの人が密集している)、
〔3〕密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や共同行為が行われる)という3つの条件が感染を拡大させるリスクが高い〕

 練習時のことに戻ります。
女声合唱団のメンバーたちが不安が無かったと言うわけではありません。
本当に歌うんだろうか、歌えるのだろうかとの心配の中、私が感染に関する最新の情報を話し、そして「それでは歌ってみましょうか」と棒を振り始める。
実は私もその第一声を聴くまでは少し緊張し、途中で止めるという選択も考えていました。しかし、です。もうそれは今まで聴いたことのない響き。
その響きと音楽が今でも耳から離れません。
マスクを通して放たれた声、音楽も素晴らしいものでした。声量といい、そのハーモニーといい、ハッシとして心に突き刺さってくるものだったのですね。
団員の中にも、そしてピアノ伴奏をしていた我が妻も涙を流していました。
その心に響いた「歌」とは、これまで歌うこと(ハモらせること)のできなかった思いを吹き飛ばしてしまう「意気」が溢れ出たものであったのでは、と思います。
元気の良さと言って良いのでしょうか。喜びを持った響きと言ってよいのでしょうか。
それは、人間にとってとても必要なもの、無くてはならないものとしての証明であったと私は受け取りました。
この最初の練習の体験が他の合唱団への練習開始を宣言した核心です。
勿論、先に記した指針に従った練習でなければなりません。
「3密」の対策、そしてそれが練習場所だけではなく、各個人の生活の中でも実施できていなければなりません。
最近解ったことのようですが、感染後、症状が現れる3日前からのウィルスが一番感染力が高いそうです。
そして症状が出て治療にあたって治まっていくほど感染力は低くなるというのです。
つまり症状が出れば「怖い」のではなく、症状が出る前が一番「怖い!」重症への扉を開く始まりだというのです。(この項つづきます)

 



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