八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.185


【掲載:2020/12/30(木曜日)】

やいま千思万想(第185回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

今年は未知と遭遇し私たちの真の姿を観た一年でした

 この時期、旅行の話が出ます。何処に行こうか?と。
一年の疲れを取り、新年に向かって養生するために。それは自身に、そして共に過ごした仲間たちへの感謝として。
しかし、この『コロナ禍』での旅行は心底ためらいを感じます。
演奏活動を再開したのは7月。去年の末からジワリジワリ迫ってきていた「新型コロナウイルス」。
今年(2020年)に入って本格化し、一気に感染者が増加。
一時は落ち着いたかのように見えましたが、夏を過ぎて再び大荒れとなって今では〈なすすべも無く〉我々を恐怖のどん底へと追い込むような勢いで猛威をふるっています。
「年末年始はおとなしくしておきなさい!」と何者か(神?)の声が聞こえます。
7月の時は「活動を始めなさい!じっとしている場合ではないでしょう!」との声でしたのに。

 

 専門家の意見が分かれます。
「一刻も早く人の動きの制限を強化すべき」とか、
いや「対応策さえ怠らなければそんなに恐れることはなく、人の動きは止めないで」とか。
肝心の国の提言はと言えば「国民の皆様に責任ある行動を!お任せします」と取れるものばかり。
精神論ばかりでは安心の要素は希薄です。
「新型コロナウイルス」は人から人への感染ですから、それを断てば防げるのは当然のこと。
人との距離を保ちマスク着用、手洗いの徹底、とにかく飛沫を飛ばさない!身に侵入させない!。
ウイルスとの闘いは、強く、賢く、防御を強化する事に尽きます。

 旅行の話ですが、そんな具合の中今回は〈突破〉では無く〈待ち〉の姿勢をと、何者かが私を引き留めます。
具体案も出ず、結局旅行は控えることになりそうです。
もう、うんざりです。というのが本音です。
このコラム原稿を書こうと思えばやはり厄介な『コロナ禍』のことに触れなければならず、全ての人が明るい未来を語り合える状況ではないのが本当に歯がゆいです。
私に関して言えば7月からの活動再開からつい先日、今年最後のマンスリー・コンサート(12月27日)まで、一人も感染者を出してはいません。
心配は〈制限〉の拡大を生みます。
しかしそれでは〈人間〉としての大切なものが失われていきます。
肉体的にも精神的にも病んでいくのは明白でしょう。
どちらも重い軽いといった比較はできません。
病は明らかに〈重い〉です!

 しかし、この『コロナ禍』で少しばかり明るいものが見えました。
それは今回のウイルス騒ぎで我が国の構造が見えたことでしょうか。
国難に対する対策がわが国では思っていたよりも強固ではなかった。
これからは真の意味で強い国ヘと変貌しなければという目的が顕わになったと見ます。それが私には希望です。
我が国の気質は世界的に見ても誇れるものでしょう。
音楽を通してそれを確認してきました。
その気質にいささか窮屈さを感じることもありますが、それも含めて世界に先んじる功績が必ずや示せると信じる私が居ます。
2020年は惨禍(さんか)の年でした。
2021年は未来に向かう〈希望〉の年としましょう。

 



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