八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.186


【掲載:2021/01/28(木曜日)】

やいま千思万想(第186回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

演奏家にとってライブこそが「生きる」営みです!

  以下に、ある演奏会で配付された私の拙文を転載します。
社会の「今」を反映していることとして意味もあるのでは、と思っています。

─ [演奏にあたって]
毎朝目覚めるのが楽しくありません。「憂鬱」と表現しても大袈裟ではないでしょう。
いきなりの書き出しで申し訳ないのですが、この「コロナ禍」での状況は窮屈で圧迫感すら覚えます。
いつも観ている景色がこれまでと違って感じるのは私の心の反映でしょうか。
音楽家(演奏家)にとって去年から今年に至る期間は「魔の期間」と呼んでもいいでしょう。
練習する場がない。演奏の場もない、特に器楽合奏、合唱は一人で楽しむことができません。
対面し、仲間同士が聴衆の前で、ライブで「音楽」することがその者たちの生きる営みです。
インターネットオンラインで様々なツールを使っての配信するといった新しい試みも行われました。
これらは随分と日常生活にも根付き、「コミュニケーションを絶やさない」ことに貢献してきたのではないかと思います。
しかし、どれもライブの楽しさには到底及びません。そのことも我々は気付かされたのではないかと思っています。

「新型コロナウイルス」は広範囲な広がりを見せています。猛威を振るっています。
それもどんどん変異し、人間にとって恐ろしい様相をもって襲いかかっているようです。
その「コロナ禍」で練習を維持し、ましてやコンサートも行うことは容易いことではないことは明らかです。
ウイルス感染防止は最新の情報を取り入れた完全を目指しての対策でなければなりません。
その対策の中には団員同士の「コミュニケーション」が要ります。これは「音楽すること」の核心でしょう。
団員の自覚と責任、そして人としての思いやり、助け合い、理解し合うということが必要不可欠です。
ただただ恐れ萎縮し、何もせずにじっと耐えるだけ、では人間としての健康を保つことができないと私は思っています。
人間である条件を満たそうとする行為が「人間」を作ると考えます。
考え得る最善の対策を講じて活動する。感染しない!感染させない!この強い決意と実行が社会にとって良くないことだとは思えません。

「名古屋ビクトリア合唱団」のメンバーの慎重さに感服です。
そして演奏会に向けての意気込みも、空回りでなく足を地につける行動となっています。これらをもって演奏会を開くことを決意しました。
「名古屋ビクトリア合唱団」第22回定期演奏会。
ビクトリア作品の連続演奏、そして団員が選んだ曲で構成しています。
合唱(合奏)は人間にとって不可欠な行為だと強く思います。
息を合わせる、響きを共にする、感情や情動、メロディーやリズムが合わさりエネルギーとなって昇華する!
今日の演奏が「生きるメッセージ」となれば嬉しいです。
演奏にあたり、万全で幸福な演奏となりますよう最善を尽くしたいと思います! ─

演奏会後に頂いた聴衆からの感想は想像を超えて「意義を認めて頂いた」ものでした。

 



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