八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.196


【掲載:2021/07/15(木曜日)】

やいま千思万想(第196回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

「民主主義」が問われます。帰路に立っているか、我が国は

 「東京オリンピック」が話題満載です。
いつの間にか「中止」や「延期」の意見がなくなり、現在では開催時での「新型コロナウイルス」(新株のウイルス)感染のことがメインとなっています。
私としては「何故、開かれるのだろうか?」と、どの視点から見ても疑問です。もともと「オリンピック」というものにそう熱心ではなかったということもありますが。

 誤解があってはいけませんから、ここでハッキリと私の「スポーツ(論?)」の思いを示しておきますね。
競い合うという大切さも解りますが、それはスポーツをしている側の問題。スポーツは観るものではなく、「するもの」だと私は以前から強く思っています。
観る側の思いが優先、色々と思惑を伴ってのヒートアップされ過ぎにはついていけません。
運動している身体は美しい!本当にそう思います。
運動美を堪能できるのも人間の誇るべき資質です。スポーツ選手は素晴らしい。
賞を取る人も、勝ち負けを気にしないアマチュアで楽しむ人も。オリンピックは、よく言われるように「国威」というものを表す一つかもしれません。
しかし、その役目を負うことのできるジャンルは他にも一杯あります。
学問、芸術然り!スポーツだけが、それも観戦だけが特記されることに違和感をずっと抱いてきました。
多くの方が心配していらっしゃる感染と社会状況、日本のこれからの数ヶ月が心配です。

 ジャーナリスト、ノンフィクション作家の立花 隆(たちばな たかし)氏が他界されました。
彼の残した業績に関する番組が組まれていたのですが、その中で特に記憶に残るメッセージを思い出します。
「現代は世代の分断が起こっている」というもの。同意ですね。世代間の「話し合い」が出来ない、ということ。
つまり思考が交差し混じり合うことが困難。通じ合う言葉が少ない。思考する原点が異なる。
そして今や「聞く耳を持たない」世代間を作る。

 友人のノンフィクション作家が代弁していたのですが、氏は思っていたようです。
「我々の世代が経験した《戦争》を未来へと伝えていかなければならない。それをし残した」と。
私は戦後生まれ。しかし、戦争というものがどんなに悲惨であるかを幼い頃、何処かで学んだと思います。
そういった場や、言葉や、空気感が周りにありました。ですから「深く知りたい」という欲求が常でしたね。
情緒論やイデオロギーでの反対でなく、体験した人たちの全身から発せられた心に迫る言葉、証言での「戦争」。
戦争は人間にとって絶対避けなければならない!と知りました。

 戦争を伝える「語り部」が居なくなりつつあります。どうすれば未来へと伝えられるのか?
我が国ではまだ足が地に着いていない民主主義。
異なった意見に耳を傾けるという基本を身に付けるにはどうすれば良いのか。
先ずは意見を言いましょうか。反映させましょうか。全国で選挙が行われています。
その〈投票率の低さ〉!せめて60%を越えたいですね。
岐路に立っている我が国と捉えます。

 



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