八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.203


【掲載:2021/11/19(木曜日)】

やいま千思万想(第203回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

「日本っていったいどんな国だろう?」それを以前に増して知りたい!

 見る側の気持ちや感じ方によって〈ものの見方〉は変わります。
偏り無くできるだけ正しく、客観的に〈ものを捉えたい〉という気持ちが私は強いです。
日本ってどんな国だろう?それが常に私の脳裏をかすめます。
「凄く〈誇れる〉国」なのか、まあそこそこに「〈普通に〉良い国」なのか、それとも「相当に問題の多い〈ヤバイ〉国」なのか。

 私は日本が好きです。
欧米諸国に対してはその文化を知って〈尊敬〉の念を持ちました。
知れば知るほど「凄い文化」だと思うのです。「思い知らされた」と言って良いでしょう。
しかしその思いを持ちながらも私の「日本が好き」、「日本を愛する」気持ちは年を追うごとに強くなっていることをハッキリと意識します。

 日本がどんな国か?それを確かめたい。私の愛する国が世界から見ればどんな風に映っているか、どんな評価が与えられているのか。
そう思ったとき、以前から抱いている問題、〈日本って特殊な事情を抱えている〉ことに突き当たります。
島国であること、日本語という独特な言語の中でのみ生活を営んでいるということに。
世界の国々と良い関係を結ぶためには日本語と異なった言語(例えば英語)を使いこなすスキル(熟練の技術・手練)を必要とします。
そのスキルが高くない我が国では諸外国から発信される情報を素早く捕らえて分析し、動向に活かすことができない、
いわゆる〈世界の大きなうねりを捉えることができない〉ということが起こりがちです。
我が国独特の「常識」が、世界を見る目を曇らせるということになっているかも知れないという問題です。

 世の中にはいろいろな研究をされている方がいます。
目立たないけれど、必要な研究。地道にコツコツと研究を進めてこられた貴重な結果が示されています。
携わって来られた方々(研究者)に頭が下がります。

 本田由紀著『「日本」ってどんな国?
国際比較データで社会が見えてくる』を知り、読みました。私のお薦めの本としましょう。
様々な項目の調査結果に〈目から鱗が落ちる〉思い。そして「成る程」と合点のいく結果です。
目次は〔家族/ジェンダー/学校/友達(「人間関係」)/経済・仕事/政治・社会運動/「日本」と「自分」〕となっています。
それぞれに調査し、結果を表で示し、解説して、著者の意見が述べられています。
著者は慎重に論を進め、読者自らが調査結果について考えてもらいたいとの提言をしています。
が、その結果は他の様々な国々と比べて日本の〈評価は著しく低い〉ということになります。
冒頭に書きました「相当に問題の多い〈ヤバイ〉国」、であることが示されたのです。

 著者は「あとがき」に書きます。
「本書で書いてきたように、日本社会には問題や課題が山積しています。
それでも、あきらめるという選択肢がないということだけは確かです。
人々が、生命や生活や気持ちを踏みにじられることなく生きていけるためには何が必要か。
そのための思考と行動の蓄積が、どうか進みますように」と。

 



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