八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.204


【掲載:2021/12/02(木曜日)】

やいま千思万想(第204回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

自然界の音を聴きませんか? 心の音、人間の尊さも聞こえてきます

  音楽業をやっていて「耳」という器官ほど不思議なものはないと思う機会が多いです。
もちろん「音を聴く」ということは、耳の構造(鼓膜・三半規管)による働きと、「脳」が判断している、という二つを分けておく必要があります。
一般に「耳」と言われるものは、外耳・中耳・内耳の部分に分けられます。
ここでは解剖学的なことにはこれ以上触れませんが、「中耳」と「内耳」の形や繋がり方、その図など一度は図鑑などで見ておいても良いかとのお薦めです。
人間にとって身を守る手段で一番役立つのは耳(聴覚)とのこと。音によって身の周りを探り、危険を予知します。
方角を知るには少し経験を必要とするかもしれませんが、何者かが近づいて来る?今居る場所はどこか?近いか遠いか?などは耳の判断です。
「音を聴く」ことは機能が高性能である方が身を守ることができるということでしょうか。
脳は入って来た信号を判断して、危険なのか、安全なのかを身体に伝えます。
原音を採り入れることと、意味ある音に変換する器官の連携が重要なのですね。(時々脳が判断を誤ります)

 雑音の中で暮らしている我々現代人は、多くの音を聞き逃している可能性があります。
人工音に慣れてしまった者には「自然界の音」には鈍感になっているのではないかと時折不安になります。
静けさを求めて、できるだけ自然の中に身を置くことを目指します。
風の音、川の音、雨の音、木々の葉っぱ、生き物の動き、命を育む音、そして遠い宇宙からの送り音(ね)。
自然界に身を委ねてそれらに耳を傾ける。何とも言えず、幸福に満たされる刻の流れです。

 とはいうものの、それを可能にしてくれる場所を探すのは本当に難しい。何処にでも人工音が発せられています。
どんどんと自然界の音が聴ける場所が狭められています。
私の住んでいる場所は比較的静かです。
どこの街でもそうだと思うのですが、静寂を突き破って突然救急車や、バイクを追っかけるパトカーのけたたましいサイレンの音が耳を襲います。
脳が多くの情報を呼び覚まさせます。精神的に大きな負担がかかるのもその時でしょう。
静けさと騒々しさのギャップ、その許容量が試される思いです。
習慣として「自然の静けさ」を求めます。
寝ている間も聴覚は働いているようですが、就寝は一日の中でも一番静穏に役立っている時間。
寝ることの重要性は言わずもがなですね。
人生の中で「自然の静けさ」を知る期間が長ければ長いほど人の感覚は、精神も併せて健全に保てるのではないでしょうか。

 最近、寝ることの大切さに気が付いた私です。知っていましたが、実行できていないということ。
〈寝ることは怠慢ではない〉、いや絶対に確保しなければならないこと!必要なことですね。
人間の感覚は、聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚と分けられています。
それらに障碍(しょうがい)を持っていらっしゃる方達の思いを想像します。
大切な感覚だからこそ〈手助け〉をしたいです。
聴覚を思うことから「人間の尊さ」をまた知りました。

 



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