八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.209


【掲載:2022/3/10(木曜日)】

やいま千思万想(第209回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

我が国は良くも悪くも平和に暮らしているのか

  今、私たちは歴史の重大な節目に遭遇しているのかも知れません。
「新型コロナウイルス」の猛威、そして誰もが予想だにしなかった武力侵攻。世界中が実は混乱している。
そんな最中に行われているオリンピック。スポーツが明らかに政治化の様相を帯びている平和の祭典。
価値観がどんどん変化して、多くの人々は何が起こっているのかも解らずに黙々と生活を営んでいる。
後の時代ではどのようにこれらの世界を評するのか知ってみたいものです。

 日本という国は良くも悪くも海に囲まれての環境で歴史を刻んできました。
独自の文化を育むには良い環境だったでしょう。
ヨーロッパに比べ、諸外国から頻繁に攻められることはないし、こちらから仕掛けなければ大きな戦も起こりはしなかった環境です。
攻めるにも守るにも海は大きく立ちはだかっています。

 さて、陸続きのヨーロッパと海に囲まれた日本とは異なる国民性を背負って日常を生きているのですが、
直接に外国との抗争、戦は圧倒的に日本は経験が少ないと言って良いでしょう。
ですからロシアとウクライナで今起こっていることについても容易に判断できる知恵を持ち合わせてはいないように感じます。
圧倒的に国交に関して経験不足です。
また歴史の理解も長けているとは言い難く、この機会に改めてヨーロッパの東側の歴史のおさらいをする人が多いように思えます。
そんな中、孤立同然の日本では一部の危機感を持つ人は別にして「遠方での人事」が多いのでは。
こう書いている私だって今のところ、私とその仲間にはウイルス感染、そして戦禍とは距離を置いての暮らしが続いています。
私が主宰する大阪の合唱団メンバーには未だ感染者は出てはいませんし(メンバーの周りでは陽性者が出ているようですが、本人は感染してはいません)、
国の紛争にも危険が迫っているという感覚も持ち合わせません。

 私など、これまでと同じように、「忙しい、忙しい」と言いながら都市間を飛び回っている始末です。
朝目覚めて体重計に乗り、食事を摂り、薬を飲み、熱を測って先ずは健康を確認。
急ぐ仕事は自室でその後続き、昼を挟んでテレビとラジオのどちらかでニュースを視聴、事の成り行きを捉えて考える。(ニュースソースはしっかりと見据えなければなりません!)
午後からは朝の仕事の続き。時には横になって休む。
夕方には部屋で仕事、時間になれば出掛ける準備をして仕事の頭に。
練習場に入ればレッスン・練習へと続く。
本番が近づけばその一つ一つに集中力は最高度に増し、疲れも忘れて突き進む。

 何という平和なことか。しかし実は内に世界情勢、我が国への憤慨を溜め込みながら、表には出さず作品の素晴らしさと楽しさを伝えて人間としての喜びを皆で味わおうとする。
その同じ瞬間に人の命が消えているのに。
私が作る音楽は愉しみだけではない、
その時代を表し、人の魂の息吹を引き起こすものでありたいと願うもの。
その表現を成し得ているか?それは未来へと託すしかない。

 



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