八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.216


【掲載:2022/6/23(木曜日)】

やいま千思万想(第216回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

人生100年?まだ後27年あります

  20日月曜日、73歳の誕生日を迎えました。この原稿はその朝に書いています。
現在は「人生100年」の世の中、この年では「老人」でありながら老人とは言えない(言いたくない)風潮があるのか?
しかし私、立派な73歳の年輪だと自負しても良いかなと言えます。戦後4年目にして生まれました。 
まだ少し戦後の様子を残している時代に育ちました。その点では「民主主義」を疑いもなく教えてもらったと思います。
それからジワジワと「変な風に世の中の動きが見える」ことを感じる時代を過ごします。(しかし、今から比べれば暫くはとても平和な時代が続きました)
大学生時代の「安保闘争」はノンポリでした。音楽の勉強に明け暮れていた年と重なります。

 そして時代が飛んで、ここ10年程は不安をいっぱい感じた時代へと移り変わりました。
「この国の柱となる価値観の基(もとい)」が根付いていないことに気が付きます。
今で言う、「分断」の始まりが既に起こっていたように感じます。
その一つに「教育」があったとハッキリ言っても良いですね。
現代史を習わない、政治についても論議することなく進み、意味も無く勉強(受験勉強)を強いる。
「何故?」との問いに時間を費やさず「答え」が先行する。そんな授業では「考える・思考力」が備わることなど望めないと知るところです。

 現在見渡せば、世界中が転換期を迎えているよう。
専制主義的な思考を許す者が増えているのか、または無知が増えているのか。
気が付けば、とんでもなく単純で一方的な事が起こってしまっている。
そんなことは昔も有ったでしょうが、少しは抗(あらが)う思考も有って自由な風潮がそこかしこに見えていたように思い出します。
生きることに夢や希望を信じる人も多く、今と比べて人生を謳歌していた、との体感です。

 でも、ここ2年程は思考停止状態。
「自由」という事に関しても、「他国よりまし」程度で実はゆるゆると領域が狭まっていっている。
同じ方向に向かなければ不安、じっと忍耐強く我慢することに慣れてしまっている、
事を荒立てないのが謙虚さ、「何とかなる」の思考、ものの価値観を定める「視点」の希薄。
気が付けば他国より全ての分野で「劣る」が目立つ。昔は世界の上位に居たものが。
73歳の重みは我が自身で感じるべきもの。社会に対する立ち位置を明確にしておきたい性分のようです。
「視点」はこの世界から忘れられ、外されてしまった者の目線。
大勢でなく無勢で。流行でなく不変なもので。
これらの中に真の事柄が含まれている、大切な教え、事柄が存在すると確信する私が居ます。

 人生100年とすれば、後27年。そんなに長生きできるとは思えませんが、心満ち足りて生きたいですね。
音楽に生き、音楽に死す。そんな人生を全うしたいです。
人間で一番の幸福、それは人を信じ切ること、信じ切ってもらえること。
人と人との間(はざま)で生きる「人間」なのですから、「皆と一緒に幸福に成ってやる!」です。

 



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