八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.219


【掲載:2022/8/04(木曜日)】

やいま千思万想(第219回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

「安定」を求めた選挙が終わっても「混乱」が増すばかり

   政界は賑わしいですね。現在は「宗教」と「政治」の関係でしょうか。犯罪を犯す「カルト」と言われる集団と政治の結びつき。
どう考えてもその結びつきに正当化を語ることは難しい。
名前があがっている代議士の弁も歯切れは悪い。
その他、これまでにも色々と騒がしくて苦々しく摩訶不思議、疑問に思われることが次々と数珠つなぎのように我が国の政治に起こっている。もうスキャンダルだらけ。
一言で言えば「お友達関係」の癒着で起こったことでしょうか。
そのために得をした人、空しく、腹立たしい思いをした人、そして命を絶たれた人もいました。
全ての秩序が壊されていくような世の動きに私には見え、暗たんたる思いが続いてきた数年です。

 その中でも一番の問題は、人知の証しであるはずの「記録」が無いという現象!
それは隠蔽(いんぺい)であり、破棄や嘘、誤魔化し、それらが横行し、議論すらまともにすることなし。
もう考えられない、思いも寄らない事ばかりで、それらによって人々は人間関係をぎくしゃくさせ、混乱させられる。
それらが人々の心の奥底深く泥のように沈殿していく。
結果、様々な意見が飛び交う開かれた社会にではなく、静かに、動きの目立たない社会(平穏を装っているかのように)となっていく。
もう、この日本には全てを都合良く、無かったことにしたい人が多くなってしまったのでしょうか?

 それを顕著に示したのが今回の参院選の選挙結果だったように思えます。
社会で起こっている事の正しい判断があったのか。党や立候補者に対して選挙人がどれだけの知識をもって選んだのか。
ある数少ないデータや見栄えの良さ、既得権益の維持、語られた言葉の精査もしないで表面的な印象と怪しげな人の請け売りで判断する。
これは言いにくいことですが選ぶ側の民度の低さ、稚拙(ちせつ)さを露呈したと思われても仕方の無い結果でしょう。
「安定」を国民が選んだ、との解説がまかり通っていましたが、現実は「安定」の真逆、「不安定」「変動」がそこかしこに起こっています。
選挙後も決して「安定」したとは言い難い。今も頻繁に「不安定」な様相が続く、いや増してしまった。
私も音楽活動の中で感じている感覚としての事実です。

 「民主主義」という言葉も頻繁に現れました。
本来、少数派の意見をすくい上げ、より多数の幸福を目指すはずのシステムが「時間がかかって面倒」との思いで疎(うと)まれ、
「独裁制」「専制」へと傾く。流石に公に「独裁制」が良いと言う人は少ないと思うのですが、
上に立つ人が独断で思うままに事を決める「専制」への傾きは確かに増えているかのように見えます。
人民が主権を持ち、自らの手で、自らのために政治を行う立場。
人民が自らの自由と平等を保障する政治形態、「民主主義」。
しかし、残念なことですがその「民主主義」の歴史が我が国にはありません。

短絡的な数の論理に陥るのは決して良策ではないと私は思っています。
さて、混乱の中にある我が国はこの先どう進んで行くのでしょう。

 



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