八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.231


【掲載:2023/02/16(木曜日)】

やいま千思万想(第231回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

まだ間に合う?日本人が誇りを示す文化と技

 「日本人」はまだ好ましい人々だと思われている。
今日(こんにち)は、どの分野においても以前のように〈名を成す人〉も減り、政治においても世界から後れをとっているとの情報。
(世界の状況を各分野ごとに国際機関が調査し、それを数字や表などの形で結果をだしていてどれも低い)
能力のある者はどんどん日本を出て他国で研究や社会活動を活発にしている。帰化して国籍を移している人も少なくない。

 しかし、「日本人」は嫌われてはいない。親切で優しく、外国人には特にそうした評価が高い。
文化に根ざしたある種の「癖」がそのように見えているだけ、と私は思っているのですが決して嫌われてはいません。
これまでの実感として私はそう思います。
ただ、外国の方が長く住み着き、働こうとした時、あるいは働いてみると「こんな国だったのか!」と最初の印象から変わっていくようです。
観光客として〈お金を落としていってくれる客〉は大歓迎なのだが、生活を共にすることになるととても日本は排他的になる。
反感を抱くこと(hate=ヘイト)から差別、蔑視が現れてくる。昨今のSNSでの争い、その表現にそれがよく表れています。

 人の印象ってどのように作られていくのでしょう。幼い頃に読み聞かせられ、それを紹介してくれる人の人柄に大きく影響を与えられるのかもしれません。
いわゆる「偉人物語」でしょうか。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ガリレオ・ガリレイ、トーマス・エジソン、アルベルト・アインシュタイン、そしてフローレンス・ナイチンゲール、マザー・テレサなどでしょうか。
私にとってはアルベルト・シュヴァイツァーが大きかったです。
アフリカの赤道直下、ランバレネでの医療活動。その献身的なヒューマニストがJ.S.バッハの論考と演奏家(オルガニスト)としても高い評価を得る。
そんなことからドイツが好きになる私。以後ドイツ国と音楽が私の中に居座りました。
人の好き嫌いや評価など、所詮たわいない事かもしれませんね。
(実はシュヴァイツァーは白人優位主義的発言、行動によりアフリカ現地での評判は決して良いものではなかったとする説があります)

 国ではなく、人。人が見えない国は印象が薄い。
「偉人伝」が皆正確で正しいかどうかは検証しなければなりませんが、人の業績が後世への人とを繋いでいくこともまた事実です。
「中村哲(なかむら・てつ)」さんをご存知でしょうか。
アフガニスタンで長年、医療と土木に尽力された方。
2019年2月、武装勢力の凶弾に倒れられた後も氏を支援するために結成された「ペシャワール会」。
その会の制作によるカレンダーを今見ながら、故人への業績を想像しています。
政府対政府の外交が大切なのは当然ですが、国民と国民の繋がりこそ信頼の礎(いしずえ)です。

 そのきっかけを作るのは「人」。理想を追い続け、誰もが真の豊かさを求め歩もうとする人。
この世から貧困者を無くそうと努力を惜しまない人。
人類にとって希望となる研究をし続ける人。日本から生まれて欲しい!

 



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