八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.261


【掲載:2024/01/18(木曜日)】

やいま千思万想(第261回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

音楽は信頼とその喜びを味わう、そして世界を繋ぐ

 イメージを湧かせる。皆(演奏者)の「気」を感じ、その「気」を引き寄せて振り始める。
私の腕が、立ち上がる音の瞬間に向かって動く。それが指揮者にとっての勝負時です。
不思議な仕事です。自分自身で音を出さず、音を操(あやつ)る。
しかし、人間の機微を知るにはこの感覚が勉強になります。
相手を見なければいけません。呼吸を感じなければなりません。音も人も信じられます。
一緒に作る、協働の喜びを知るのですね。その重要なことを学べるのですね。
どう足して、どう補うか、探ることと、実践とが同時に行えるのです。

 指揮者という仕事は良く考えればとても「幸せ者」なんですね。
まぁ、誰でもできる仕事ではないかもしれません。仕事場も、収入も、生活できるところまでになる人は少ないでしょう。
公の書面にはまだ職業欄に「指揮者」は入っていません。私はいつも「自由業」です。
堂々と、指揮者と書くこともあるのですが、「こんな風に書いて良いのかな?」が付きまといます。
この仕事をしていて、とても嬉しい場面が幾つもあるのですが、最近またその機会を得ました。

 昨日合唱団と練習をしていたときです。練習場としてお借りしている教会の隣がホテル。
そのホテルに泊まっている宿泊客か(よく覗きに来られます)、
あるいは近くに大阪城がありますから観光客なのか、フランス人の家族が来られたのですね。
いまは便利になりました。その家族のお子さんが手に持っているのが翻訳機。
それを使って家族の感想や本人の思いも伝えてくれるのですね。
私たちのスタッフが応対したのですが、「凄く巧い。とても感動してる。鳥肌が立った」と感想をくれたのです。
「鳥肌が立った」はこちらの少し言い換えも入っているのかも知れませんが、間違いのない反応だったと思います。
家族の他、カップルもずっと聴いていたそうですが、とても感心した様子で帰られたそうです。どちらも相当驚かれた様子が見て取れます。
いつもまにか練習の合間に立ち去られたようですが、
きっとその方達にとっての旅行に、なにがしかの思いを残すことになったと思います(海外での演奏を思い出します)。
このような時、とても誇りを感じます!

 このコラムを書いている日の午前中、室内オーケストラの「シンフォニア・コレギウム大阪」の練習も同じ教会であったのですが、
午前中だからか、観光客の訪れはなかったのですが、久しぶりに協演するメンバーと5年ぶりの再会。
「コロナ禍」での3年を挟んだからなのですが、そのティンパニー奏者との「息合わせ」が最高に楽しかったのですね。
これこそ指揮者と奏者ならではの喜びです。
「いつもSNSで観てますから時間が経っていたとは思いませんでした」と。とにかく幸せな時間でした。

 突然ですが、誇りを感じた勢いで動画配信のお知らせを。
演奏会の模様を多くの方々に鑑賞して頂ければ幸いと、お誘いをさせてください。
詳細はhttps://www.collegium.or.jp/ticket/





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