八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.262


【掲載:2024/05/09(木曜日)】

やいま千思万想(第262回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

「昭和」は良かった。しかし、その世代が問われます。どうしますか?

 私は昭和24年生まれです。昭和、平成、令和と生きてきたのですが、私の育った昭和が一番良かったですね。
まぁ、それぞれの生きた環境に違いがありますから一概には言えないのですが。
しかし、考えてみれば、その良かったと思う昭和に「第二次世界大戦」が勃発し、日本も「真珠湾攻撃」によって「太平洋戦争」に突入しています。
私が生まれる前とはいえ、悲惨な大戦があり、そして終わった「昭和」でした。
その戦争の終わりがホロコーストであり、広島と長崎に投下された「原爆」であったとは。
なんと象徴的な、人類が地獄を見た年代だったのでしょう。

 終戦を迎えたその4年後に私は生まれています。日本が新しい社会を作ろうとした年代と重なります。
最近よく言われていることなのですが、その〈新しい日本社会〉は日本人自ら作ったものでなく、占領軍アメリカの思惑で作られたものであると
。 でも世界的にも驚かれ、人類の目標、お手本とも評される「日本国憲法」が公布されるのですね。
今では色々言われていますが、終戦直後はその憲法下で教育基本法・学校教育法が公布され、それに基づいて日本人は生活を始めました。
私の受けた教育はその真っ只中と言えます。
日本は奇跡的とも言われるほどに復興しました。
隣の国の戦争によって、とも言えますが、とにかく勤勉で良く働く国民性があってこその復興でしょう。

 学問でも世界的に知られます。
私が生まれた1949年に湯川秀樹氏がノーベル物理学賞、
1965年朝永振一郎氏もノーベル物理学賞、
1968年には日本人初の文学賞を川端康成氏が受賞されています。
そんな中にあって映画や音楽、そして大衆文化もずっと人々の癒し、娯楽としてその地位を保っていました。
黒澤明監督の「羅生門」はベニス映画祭でグランプリ受賞。
日本初のロケット発射も行われ、
南極基地でタロ・ジロの生存確認に国民は喜び、
堀江謙一氏の太平洋単独横断成功に勇気を貰い、
植村直己らが初のエベレスト登頂を果たして希望をもらい、
私たちも、そして世界からも「日本人は大したものだ」と思うに至ります。
凄いことではありませんか。偉業はその後も続きました。

 私の20代は今から思えば〈ばら色人生〉です。
何でも出来たし、夢や希望を捨てなければならないなんて考えることなく過ごす事ができました。
その中で生まれたのが、私が主宰する「大阪コレギウム・ムジクム」です。
そんな時代であったからこそ生まれることが出来たのです。
しかし、徐々に世相が変化しはじめました。それらを体感した私です。
日本が新しく変化しようとしている中、逆戻りの意見が増え始めます。
そして昭和天皇の崩御をもって昭和が終わりました。
後は相反する思惑が拮抗する時代でしょうか。
それは今も続いていますが、ただ今年になって、長年この国の政治を司ってきた党の醜悪が明るみに出、
根こそぎその信頼性に疑問を抱き始めた世相となっています。
さて、この終結はどのように迎えるのでしょうか。
我々国民が問われていますね。





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